北海道での修行を終えて静岡へ移住&独立。日本一のチーズを作る!
「七富チーズ工房」代表 高木 宏昭さん
- 移住エリア
- 北海道→静岡県富士宮市
- 移住年
- 2019年
富士山のふもとで草を食む牛の姿を見て感動し、静岡県富士宮市に移住した高木さん。現在は市内に「七富チーズ工房」を開き、多くの方にチーズを通して富士宮市の魅力を伝えています。
移住と開業に至るまでの経緯や、現在の暮らしについて、高木さんにうかがいました。
目次
富士山のふもとで生産されている、良質な牛乳と食の惠
北海道大学在学時より、静岡の立地や海の惠、山の幸といった食の豊かさに興味を持ち旅行でも訪れていた高木さん。いつか静岡で自身の事業を起こしたいとずっと考えていたそうです。卒業後、北海道内のチーズ工房で修行をしながら全国各地を巡る中で、富士宮市で生産されている牛乳が北海道の牛乳にも負けないほど良質で、またチーズ作りに欠かせない美味しい水もあることを知りました。
「富士宮から見る富士山の風景は圧巻です。その富士山のふもとで草を食む牛の姿を見たときに『ここの牛乳の美味しさを、チーズを通して地元の人だけでなく全国の人にも食べて知ってもらいたい』と思い、移住を決意しました」
知り合いも親戚もいないまちへの移住&起業
移住をしたいと思いましたが、富士宮には縁もゆかりもなく、当時はまだ20代前半で経済的にも余裕がなかったため、まずは北海道のチーズ工房で働きながら何度か静岡を訪れ、富士宮市役所で移住の相談や支援を行っている企画戦略課に相談に行き、移住の準備を進めました。
「住む場所を不動産屋で契約したり、富士宮で働き口を探したり。チーズ工房を創業するにあたり、原料である生乳生産のことを知っておきたいと、朝霧高原にある酪農家さんのところで働かせてもらうことになり、2019年に移住しました」
そしてコロナ渦の2021年1月、富士宮に自身のチーズ店をオープンしました。
「チーズは、作り方が同じでも工房や環境によって出来るものが違いますし、原料の牛乳や作り手によっても違いが出てきます。作り手である私の体調によっても出来上がるチーズに差が生まれます。その差を見極めながら、日々の製造に追われる3年間でした」
さらに、2022年には富士宮の企業として初めて静岡県庁主催の食品コンペで最高金賞を受賞。高木さんは、富士宮の牛乳の素晴らしさと北海道で学んだ事が間違っていなかったと確信しました。
工房の裏手には、毎日違う姿をみせてくれる富士山があり、工房の目の前には関東でも上位の賞を取る牛乳生産を行う牧場の牛が放牧されているそうです。
「移住をしたいと思った風景そのものです。自分が好きな事を仕事として生活出来る喜びもありますし、決してアクセスの良い大きい道沿いではないお店までチーズを買いに足を運んでくださるお客様に恵まれ、大変ありがたいと感じています」
地域の人々や飲食店との交流と成長
移住して、地域の人の優しさも実感されているそうです。
「独り身なので、近所の方やお客様から地元の美味しい食べ物やおすそ分けをいただいたり、仕事でなかなか参加できない町内の行事や活動を免除してくれたりと、富士宮市民の穏やかで人当たりの優しい雰囲気も私に合っていたと、住んでみて感じました」
現在、地元の飲食店をはじめ、小山町の富士スピードウェイに新しくオープンしたハイアットブランドのホテルでも富士宮のチーズが提供されています。
「土日の直売所では、チーズを作っている私自身がお客様に直接販売をしています。その時のチーズの状態をお伝えしたり、常連のお客様とのコミュニケーションの中で感想を聞いて、製造を改善していくことが出来たのが、貴重な経験でした。まだ始まったばかりの小さなチーズ店ですが、お取引先をはじめ、常連のお客様には育てていただいているという感覚です。だからこそ、美味しく感動してもらえるチーズを日々変わらず作ることを大事にしています」
2021年の4月からは月に2回静岡市での催事出店もし、市内でもチーズを好むお客さんが増えてきたそうです。
「近々、富士宮の牛乳でできたソフトクリームも提供できる2号店をオープンしたいと準備をしています。2号店や日々のチーズの情報はInstagram(@nanatomi_cheese)でも発信していますので、気になる方がいらっしゃいましたらぜひチェックしてください」
最後は自分の選択と覚悟
最後に移住を考えている人へのメッセージをうかがったところ、「人生は一度きりだから、自分のやりたいこと、好きな場所で住めばいい」という考え方だけではなく、しっかり準備することも重要だと語ります。
「テレワークや長期休暇を利用して、普段の生活から距離を置くなど、今の環境や状況でも出来ることは沢山あると思います。田舎暮らしには良い面、悪い面が当然ありますし、出会った人とのご縁や運によって、同じ町でも暮らしやすさは変わってくると思います。私は食という興味関心と、酪農・乳製品という仕事が、この富士宮の環境に合っていたこと、応援してくださるたくさんの方のお陰で、暮らしやすく過ごせています。良い結果でもうまくいかなくても、最後は自分の選択と覚悟だと思いますので、今の生活や暮らしを続けるもよし、移住するもよし。住む場所や仕事を変えることは人生でも大きな方向転換ですが、一人でも多くの方が理想の暮らし、働き方ができるよう、この経験がその一助となれば幸いです」
「七富チーズ工房」代表 高木 宏昭さん / たかぎ ひろあき
1993年愛媛県生まれ。北海道大学在学時より、アイスクリーム販売会社を創業。卒業後、チーズ工房に就職し、製造技術を学ぶ。独立するために全国各地を巡る中で、静岡県富士宮市では富士山を背に牛が放牧されており、高品質な牛乳が生産されている事を知り、移住を決意。2021年に「七富チーズ工房」をオープンさせる。
2022年には富士宮の企業として初となる静岡県庁主催の食品コンペにて最高金賞を受賞する。
■関連リンク
- Webサイト「七富チーズ工房」
- Instagramアカウント@nanatomi_cheese