アメリカ、ブータンでの農業経験を経て尾道へ
尾道市地域おこし協力隊 大橋 和也さん
- 移住エリア
- 海外(ブータン)→茨城県水戸市→広島県尾道市
- 移住年
- 2020年
小さい頃から農業に興味があり、大学院で農学を学んだ大橋和也さん。大手小売会社で4年間勤務した後、脱サラしてアメリカやブータンで農業経験を積みました。そして、帰国後は広島県尾道市で地域おこし協力隊として、農業と地域活性化に取り組んでいます。
大橋さんに移住先を決めるにあたってのポイントや、現在の活動について伺いました。
目次
夢だった福島での農業から一転
東京都出身ですが、もともと祖父母が福島県で農業をしていて、幼いころから農業に興味があったんです。大学院の農学部を卒業後、大手小売店の青果部で4年間勤務し、東日本震災を機に脱サラ、祖父母の土地を継いで福島で農業をするつもりでした。ところが、放射能の影響で収益率の高かった果実やきのこ栽培等が難しくなって。
それならいろいろな農業経験を積もうと、水戸市の農業学校で勤めた後、1年半ほどアメリカの有機農場で研修。その後は青年海外協力隊としてブータンに赴任し、アメリカで得た技術を生かして2年間農業指導に携わりました。
学生時代に旅行した尾道が移住先候補に
帰国後は都市部で仕事をするつもりはなかったものの、すぐに移住先を決められず、いったん水戸市の農業学校に戻って移住先を探していました。妻は、瀬戸内地域でフリーランスの映像制作やアナウンサーをしており、一緒に岡山や広島など備後圏域を調べていました。尾道には、農業のイメージを持っていなかったのですが、御調(みつぎ)地域は米や野菜の農業が盛んであることを知り、タイミング良く「地域おこし協力隊」の募集を見つけたんです。
田舎過ぎず、暮らしを楽しめる場所
移住先を決めるにあたり、「海山が近いこと、産直市場があること、温泉施設があること」という、妻の3つの要望があったのですが、御調はピッタリ当てはまりました。自然が豊かな点や、しまなみの多島美も気に入りましたが、道の便が良いことも決め手になりましたね。御調町には国道の交差点が位置しており、高速インターも町内にあるんです。それなりの総合病院もあり、生活するうえで困りません。
まったくバックグラウンドのない本当の田舎で子育てをするのは難しいのではないかと思っていたので、ほどよい場所だったとよく話します。移住後に妻と結婚、1年後に子供が生まれました。家族で海に遊びに行ったり、平日の混んでいない時に尾道観光をしたり、気ままに余暇を楽しんでいます。
地域おこし協力隊として農業に携わる
いまの主な仕事は、農業振興と地域のPR業務です。地元の農業者さんの研修をしたり、事業者さんと共に、商品づくりに関わらせてもらったりしています。野菜ソムリエ・プロの資格を活かして、地元の小中高校で、食育、農育として、子供たちに食べ物がどうやって作られているか、売られているかを伝える仕事もしています。他にもSNSや動画で御調町の魅力を内外へ発信しています。
コロナ禍ならではの苦労も
着任当時はコロナ禍が始まった時期で、「東京から来た」ということもあり、なかなか地域の方との交流が出来ませんでした。それでも協力隊は役場に属しているため、地域の方から見ると「役場の人」という認識なので、学校など公の場への挨拶はスムーズでした。
また、夫婦ともに実家から遠く離れて初めての子育てなのに、コロナ禍のため周囲に預けたりすることも難しかったですね。ただ、御調は「地域包括ケアシステム」の発祥の地で、施設も揃っていて、保健師や、栄養士、民生委員とのつながりがしっかりしていて、電話などで安心して相談できました。地域の子育て支援センター『みっけ』には、生まれる前からお世話になりました。
「ふるさと回帰支援センター」を利用して
妻と一緒に情報収集をしていましたが、当事者同士だけで話をしていると、候補地の良いところばかり見えてしまい、憧れ過ぎちゃうことがあると思います。自分の思い込みだけで突き進むと、ミスマッチにもつながりかねません。そんな時、ふるさと回帰支援センターを利用し、「自分たちがどうしても捨てきれない部分」「これは無くてもどうにかなるよね」など、第三者に話をきいてもらいながら取捨選択できました。センターの相談員の話が、良い意味でブレーキにもなり、アクセルにもなりました。
移住を考えている人へメッセージ
移住は自分一人だけのことではありません。単身の人も両親にはきちんと相談するべきだし、家族で移住する場合は特に一生のビッグイベントです。家族でしっかりと話し合って、自分たちの築きたい未来を考えてみてください。
(※このインタビューはふるさと回帰支援センター発行の情報誌「100万人のふるさと」2023初秋号掲載の内容をWEB用に一部再構成したものです)
尾道市地域おこし協力隊 大橋 和也さん / おおはし かずや
1984年東京都生まれ。大学院修了後、大手小売会社の青果部に勤務。農業を志して退職後に、茨城県水戸市の農業学校勤務、アメリカでの農業研修、青年海外協力隊としてブータン赴任(農業指導)を経て、2020年より広島県尾道市へ移住。地域おこし協力隊として農業振興と地域のPR業務に携わる。
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