縁がつながってたどり着いた自分の居場所で、農家として生きる
リンゴ農園「Free da FARM」経営 郷原 遼太郎さん
- 移住エリア
- オーストラリア→東京都→群馬県中之条町
- 移住年
- 2019年
サラリーマンとして働き詰めの毎日に疑問を感じていた郷原さん。心身をリセットするため、オーストラリアに渡りました。そこで農業と出会い、その魅力に惹かれます。
「今では東京よりもこっちの方がリラックスできる」と語る郷原さんが群馬県に移住した決め手は、何だったのでしょうか?お話をうかがいました。
目次
オーストラリアでの決意「スーツを着る生活はもういい」
中之条町に移住したのは2019年の6月です。移住してすぐにリンゴ栽培を始め、1年半の研修期間を経て2021年に新規就農しました。今はリンゴ農園「Free da FARM」の園主として、ふじ、ぐんま名月、秋映など13品種ほどのリンゴを栽培しています。
移住の大きなきっかけになったのは、29歳でワーキングホリデーに行ったことです。サラリーマンとして働き詰めの毎日に疑問を感じ、一度リセットするつもりでオーストラリアへ。そこで農業をやるようになり、価値観が大きく変わりました。携わったのはブドウ、イチゴ、ブルーベリー、リンゴなどの収穫です。収量に応じての歩合制が多かったので、ひたすら取る生活でしたね。そんな風に1年半ほど農業を中心に暮らしました。
農業の魅力は、自然の中で仕事をすることです。日の出とともに畑に行き、日が暮れると帰る。1日が自然のリズムに沿って流れるからか、体調も良くなりました。最後の2か月ほどはテント生活をしたこともあり、心も体も強くなったと思います。
移住を考えるようになったのは、日本に帰国する前からです。「スーツを着る仕事はもういいかな」って思っていましたね。サラリーマン時代の自分からすると考えられないことです。以前はサラリーマンがスーツを着ていると、何だがかっこよく見えていましたが、そういう価値観が完全に無くなっていました。
初めて行った中之条町で、リンゴ畑と巡り合った
帰国後は、ひとまずお金を貯めるために2年ほど自動車工場で働きました。具体的に移住先探しを始めたのは2018年になってからです。9月の「ふるさと回帰フェア」、10月の「オールぐんま暮らしフェア」に参加して、翌年のゴールデンウィークに群馬県内の4市町村を現地訪問。そこで移住先を決めました。
当初、移住先はどこでもいいと思っていたので、回帰フェアでは群馬県以外の地域にも話を聞いていたんです。最終的には、実家がある東京へのアクセスが良い群馬県に絞りました。その後、県のイベントに参加して複数の市町村に話を聞きました。
中之条町のことは、それまで全く知らなかったんです。現地訪問の際に案内をしてもらえるというので、訪れたのが最初です。いろいろな話の中で、町が管理をしているリンゴ畑が借りられるというのを聞いたのが、移住の決め手になりました。
現地訪問の目的は、最低限の仕事があって自分が生きていけそうな場所を探すこと。農業をしたい、リンゴを作りたいという思いがあったわけではありません。仕事を辞めるタイミングなど偶然が重なった結果なので、導かれた感じもありますね(笑)。
リンゴ農家としての暮らし
農家をやっていて嬉しいのは「美味しい」と言ってもらえることですね。実は最初に借りた畑で作ったリンゴがしょっぱかったんです。肥料の調整など試行錯誤をして味が良くなったときに、「美味しい」と言ってもらえたのは本当に嬉しかったです。自分が努力した分、食べた人に喜んでもらえる――反応がダイレクトに返ってくるところが、一番のやりがいです。
独立して今年で3年目。1反歩(※)だったリンゴ畑も、5反歩弱になりました。売り上げは2倍ほどになりましたが、当初目標にはまだ届きません。リンゴはすぐに収穫できないので、補助金と農閑期に菊栽培のアルバイトをして何とかやっています。リンゴの収穫は10月から12月までですが、その前に収穫できるものを増やそうと、ブドウの栽培も始めました。
反歩…田や畑などの面積を反を単位として数えるのに用いる語
中之条でのこれから
ちょっとベタですが、僕にとって中之条町は第二の故郷。今では東京よりもこっちの方がリラックスできます。全く知らない土地でしたが、近所の方が気に掛けてくれたり、移住者や農家のつながりができたりで、一人になることはありませんでした。
今はリンゴで生計を成り立たせようとしている段階ですが、少しずつ研究を重ねて美味しいリンゴやブドウを作れるよう頑張っていきたいです。将来的には自分の直売所を持ち、人を雇用出来るようになりたい。周りの人にたくさん助けてもらってるので、もう少し規模を増やして地域に貢献できたらと思っています。
(※このインタビューはふるさと回帰支援センター発行の情報誌「100万人のふるさと」2023初夏号掲載の内容をWEB用に一部再構成したものです)
リンゴ農園「Free da FARM」経営 郷原 遼太郎さん / ごうはら りょうたろう
1985年生まれ、東京都出身。営業職を経て、29歳の時にオーストラリアでワーキングホリデーを経験。帰国後は自動車工場で勤務し、2019年に群馬県中之条町へ移住。現在はリンゴ農園を経営している。
■Webサイト
リンゴ農園「Free da FARM」