茅葺(かやぶき)の家でゲストハウスをオープン。人や文化をつなぐ
「合掌ゲストハウス かずら」経営 東山 浩二さん
- 移住エリア
- 愛知県→富山県南砺市
- 移住年
- 2019年
「不安はいくら考えても新しく出てくるものです」。富山県に移住後、ゲストハウスを開業した東山浩二さん。しかし、開業半年後に新型コロナウイルスが蔓延し、事業は大きな打撃を受けました。それでも東山さんは諦めず、出来ることからチャレンジしました。
目次
移住のきっかけは「ゲストハウス」
2019年に名古屋から移住しました。きっかけは、現在「合掌ゲストハウス かずら」として私が運営している宿の管理人募集をフェイスブックで見かけたことです。富山県に対して特にイメージは持っていなくて、「金沢に近いならちょっと遊びに行ってみようかな」という感覚で訪れました。初めて来た日が快晴でとても気持ちが良く、ここなら住んでもいいかもと思いましたね。
名古屋では自然食品と雑貨のお店を経営していました。お店の場所を移転する必要があり、そのタイミングで移住しました。最初は、住む家が見つからず、車やゲストハウスの床に寝泊まりしていました。自然食品で出展したマルシェで、「家探してます」という貼り紙を出したりして数か月後にようやく決まり、家族を呼び寄せました。
オープン後、コロナが直撃!
ゲストハウスは、築350年の合掌造りの建物で、以前はお蕎麦屋さんや自転車屋さんとして使われていました。前のお店が閉店してから何10年かは空き家でした。でも、役所が調べたら、文書が残っている茅葺の家では世界で一番古い木造建物だと分かり「こりゃ大変だ」と。役所と委託会社がリノベーションをして、宿として利活用することになり、1か月後にオープンしてほしい、ということで僕が来たわけです。
オープンしてから2~3か月後くらいから徐々に海外からの人が増え、7割は海外のゲストで埋まるようになりました。ところがオープン半年後にコロナ感染が拡大。一気に外国の方が来なくなってしまいました。
地元自治体の協力を得て、新たな事業を
コロナ禍で何かできないか、と考えて、他のゲストハウスと一緒に、役所の前で地元食材を使ったカレーをキッチンカーで販売しました。市が所有する、使われていないキッチンカーがあったんです。
「自分たちの生活を守る+キッチンカーを使う人がいない=困ってるなら使えばいいじゃん」と思い、役所にお願いして実現しました。
とは言え、僕は料理人じゃないし、毎日はしんどいので1か月の期間限定でやりました。役所の前で販売ができることがわかれば、ほかにも始める人が現れるのでは?と思っていたら、実際にいまは他にもキッチンカーが販売を始めています。僕がきっかけになったのか分かりませんが、前例を作ったことで書類は通りやすくなったと思いますよ。
田舎って、役所との距離が近いんですよ。特に移住者というだけで、フォーカスされる、良い意味でレッテル貼られる。その状態があるから、役所ともやりやすいです。今までそんな経験はないのでワクワクします。
今はゲストハウスで、映画の上映会やヨガなどのイベントも開催しています。せっかく日本海側に来たので、太平洋側と日本海側をつなげたいという思いもあります。国をまたがなくても貿易ができるんです。自分が移動する中で、さまざまなカルナチャーなど面白いものを見ているので、それを紹介したいという気持ちがあります。いままで知り合った人を、南砺市に紹介したいし、こちらで見つけたことを他の土地にも広げたい。自分が面白いからやってるんですが、それで町が盛り上がるとうれしいです。大変だけど、名古屋にいたままコロナ禍になっていたら、1か月で破産していたかもしれないですしね。
移住を迷う人へのアドバイス
「地方へ移住しると、収入が減るのでは」と、心配になるかもしれませんが、本業以外にも草刈り、除雪など、空いた時間で出来る仕事がたくさんあります。野菜などをいただくことも多いですよ。自分たちも「何か返さなきゃ」と思いますが、「ギブアンドテイク」の時間軸が田舎は違いますからね。「あんたの所にはじいちゃんの代から世話になってるから」とさらっと話す地元の人と、移住者との間に差があるのはしょうがないです。
不安とリスクは分けて考えた方が良いです。不安はいくら考えても、新しく出てきます。移住を検討して場所が決まっても、「本当にここでいいのかな、ここで良かったのかな」と。でも、リスクはある程度管理できると思います。
友達ができるかなと心配なら、例えば今から通勤中に1か月一人でも友達を作ってみてはどうですか。最初は恥ずかしくてできなくても、勇気を出して目が合ったらニコっと。そのうち、「自分は他のところに移住しても人とつながれるな」という自信になります。
移住して気が付いたこと
苦労したことはないんですよね。夜の8時頃に店が閉まるので、当初、夕食難民になったことくらいかな。特に家族で行ける店は早く閉まりますからね。はじめは生活のリズムを変えなくてはいけないことがストレスでした。
地域の人と仲良くはしたいけど、必要以上にへりくだってまで関係性を続けると自分たちが疲れてしまいます。必要以上に自分を押し出すと、内心「なんだあいつは」って思われてしまうかもしれない。どちらにしろ、「やっぱり都会から来た人は変わってるね」って言われますけどね(笑)。
名古屋で自然食品の店を経営していたころ、美味しい野菜の見分け方のワークショップをしたいと思っていました。今となれば、よくわからない企画だったなと思います。野菜のことを知りたいなら、畑に行ってみるのが一番ですよね。切り口を見てどうこうではなく、キャベツを収穫してきて、それがどう枯れていくかを知っていたら良いだけなんですよ。場所が変われば気づけることってあります。なんだか旅に似ています。
(※このインタビューはふるさと回帰支援センター発行の情報誌「100万人のふるさと」2021冬号掲載の内容をWEB用に一部再構成したものです)
「合掌ゲストハウス かずら」経営 東山 浩二さん / ひがしやま こうじ
1981年、愛知県生まれ。名古屋で自然食品と雑貨を扱う店を営み、2019年に移住。当初は単身での移住だったが、のちに家族も移り住む。現在は「合掌ゲストハウス かずら」を運営。
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