世界中を旅してたどり着いた理想の暮らし。移住サポーターとして農家レストランもオープン
たはら暮らし定住・移住サポーター、農家レストラン経営 小川 史さん
- 移住エリア
- 大阪府→愛知県田原市
- 移住年
- 2010年
移住は、私に「足るを知る」を教えてくれました。こう語る小川さんは、毎日幸せを与えてくれる田原市に「Give back(還元)」しながら生きていきたいと考えています。移住を考えている人には、「少なくとも1ヶ月はお試し移住をして欲しい」「年間に複数回訪ねて、その土地の四季を体験してほしい」。そうすることで「自分のイメージと違う」を減らすことができるからと伝えているそうです。これまでどんな体験をされてきたのでしょうか。
目次
世界を旅して知った「決め手は人」
アメリカ、メキシコ、プエルトリコ、インドネシア、オーストラリア…それに愛知県田原市。2010年から2013年頃にかけて、どこに移住しようかと小川さんが訪ね歩いた場所です。これらの場所に共通点があることに気付かれたでしょうか?そう、海に面していることです。小川さんが探し求めていたのは「波」。やろうとしていたことはサーフィン移住でした。
良い波を求めて世界中を旅して歩き、良い波が来る場所に移住してサーフィン三昧の暮らしを送る。理想の暮らしを求めて世界を旅した小川さんが、移住先の最終的な決め手になったのは、「波」ではなく「人」だったといいます。
田原市にサーフィンに行った時、80代くらいのおばあちゃんに声をかけられました。
「サーハーするだか?」
サーファーでもサーフィンでもなくサーハーだったことに微笑んだ小川さん。海から戻ると、暗くなった駐車場にナスが山ほど置いてあったそうです。これで、おばあちゃんと仲良くなり、移住を決意。小川さんは田原市を「物々交換で生きていける町」と表現します。
今、小川さんが営む農家レストランは、このおばあちゃんの息子さんから借りています。回りまわって縁がつながっているのです。
移住サポーターとしてマルチに活躍
そんないきさつで、2010年に大阪市から愛知県田原市に移住。2019年からは田原市の「たはら暮らし定住・移住サポーター」を務めています。移住に関する講演などの情報発信をはじめ、住まいや仕事等に関する相談にのったり、新生活のサポートを行なっています。
例えば、田原市には縄文時代の遺跡があるのですが、住民にとっては大昔からある当たり前のものなのでPRに熱心ではありません。これが移住者である小川さんからみると、「狩りの道具は出土するのに、人を殺める武具は出てこない。縄文遺跡は平和の象徴」となります。
「田原の人たちは、1万年以上いさかいなく暮らしてきた平和の民の末裔なのでは?」と問い掛けます。
人骨の出土量が日本一、ということは日本一住み良い場所だったに違いないと思うのです。
さらに出土した人骨の上腕骨は、東大の海部教授によると、日本で一番太くて長いらしく、田原の縄文人は日本で一番マッチョな縄文人だというわけです。
日本一が目玉にならないはずはない。小川さんの企画にJR東海が賛同し「田原で今一番アツい縄文を味わう」ツアーも実施されます。
その他にも、あかばねこども園の園児たちに、農業体験や自然観察をしてもらったり、プロの画家を呼んで美術を教えてもらったり。こうした共生体験は、「地域の子どもたちに優しさを教えてくれたように思う」と話してくれました。
また、サーファー同士のつながりを活かして、オーストラリアと田原市の子どもたちを相互派遣し交流する企画も考え実施しました。30数年前に消滅した地引網漁を、一人だけ残った経験者から聞き取りながら復活させたことも。漁に参加した地元の中学生が、感想を文集にまとめてくれたことが「うれしくてたまりません」と言います。
街の交流拠点として機能する農家レストラン
小川さんのキッチンカーからスタートしたお店は、縁を紡いで築70年の元保育園を借り受け、実店舗 DIEZ cafeになりました。地元の人から「よかったら、使ってみんかぁ?」と言われ一目で気に入ったそうです。
マフィンや、「海をきれいにしたい」と自ら育てた野菜を使った料理が人気です。メキシコで出会ったハラペーニョ(唐辛子)を使ったペーニョポン酢は主力商品に成長しました。
お店は、海からもどったサーファーのくつろぎの場だけでなく、地元の人たちにアートを提供する場にもなっています。ライブやを映画鑑賞会なども開きますが、高齢者と子どもは無料。ほかにも、「地元の公共施設がなくなるそうだがどう思う?」と地域の人たち自然と集まる場所になっていて、存続を求める意見書をまとめたりすることもあるそうです。
農家レストランは街の交流拠点としても機能しています。
移住して学んだこと
小川さんに、「もし移住していなかったら今何をしていたと思いますか?」と聞くと「大阪で金ゴンになっとったと思うわ」と大声で笑いました。
田原市に移住して「足るを知る」を学んだのだといいます。だから毎日幸せなのだと。幸せだから「当たり前にGive back(還元)したいと思うんだ」と話してくれました。
たはら暮らし定住・移住サポーター、農家レストラン経営 小川 史さん / おがわ ふみと
1978年生まれ。大阪府大阪市出身。1998年専門学校卒、同年中央市場仲買に就職。30歳の時、人生を考え直し退職。サーフィンの旅を開始し、発祥の地”ハワイ”に飛び込み自然の偉大さを知る。ショップの大会では数回優勝、アマチュアの全国大会にはコロナ前まで毎年愛知県代表で全国大会に出場。サーフィンギアはすべてスポンサード有。
2010年に愛知県田原市に単身で移住。移住後、結婚。田原消防特別水難救助隊講師兼隊員も務める。
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