大企業を辞めて20代で単身移住。地方で自分が実現したいことに挑戦する。
豊岡市地域おこし協力隊OB、「株式会社ねじまき鳥」代表取締役、本屋店主 武藤 保貴さん
- 移住エリア
- 東京都→兵庫県豊岡市
- 移住年
- 2021年
「コウノトリの野生復帰」や「豊岡演劇祭」など、先進的な取り組みを進めてきた兵庫県豊岡市。武藤さんは、大企業を辞めて地域おこし協力隊としてこの地へ移住しました。移住後は幼児向けの自然体験活動である「森のようちえん」の立上げ・運営支援に尽力してきました。現在は本屋営業や会社経営にも挑戦しています。
目次
地方でチャレンジしたかった3つのこと
大学卒業後、東京の大企業で働いていた武藤さん。会社員の頃から将来チャレンジしたかったことがローカルで生活すること、森のようちえんに関わること、本屋を作ることでした。
「3つとも学生の頃から好きなこと、楽しかったことです。大学でフィールドワークを専攻したのがきっかけで、定期的にローカルな地域に行って人々と交流するのが好きでした。また、学生時代の4年間、中高生向けの個別指導塾でアルバイトした経験から、幼児教育、特に『森のようちえん』に高い関心を持っていました。本を読むことや本屋に行くことは元々大好きでした。ただ、東京での会社員生活も充実していたので、いつかやりたいくらいで考えていました」
しかし、2020年に日本でも発生した新型コロナウイルス感染症が大きな転機となりました。
「コロナ禍で、自分の人生について考える時間が増えました。それで、一度きりの人生ですし、自分がやりたいことに挑戦しようかと。2020年の春頃から地方移住に関する情報を調べ始めましたね」
大企業を辞めて地域おこし協力隊へ飛び込む
武藤さんが情報収集の際に利用したのが、関係人口づくりと移住のためのマッチングサイトでした。
いろいろな地域の方とオンラインで話すなど情報を集めていく中で、「森のようちえん」を立ち上げるために豊岡市が地域おこし協力隊を募集するのを目にしました。
「この募集に出会い、すぐに豊岡市に行きました。自分の目で地域を見て回り、豊岡に住む方々ともお話しました。そのうえで、自分がやりたかったことを実現できそうという直感を信じて、応募しました」
大企業を辞めて移住することに不安はなかったのでしょうか。
「もちろん不安もありました。ただ、僕の場合は20代の単身移住というのもありますが、もし失敗したら都会で会社員に戻ればいいやと思い切って、移住を決意しました」
地域を理解することから始めて、「森のようちえん」の立上げへ
移住後はまず市内のさまざまな場所を訪ね、活躍する方々に会いに行った、と武藤さんは言います。
「学生や会社員時代の経験から、地域のことを理解し、地域に住む人とのつながり・関係性が大切という考えからですね。この時の行動が、その後の『森のようちえん』の立上げや本屋作りをいい方向へ導いてくれたと思います」
地域おこし協力隊として武藤さんは、福祉や林業などを行う民間団体や市役所、地域の方々と協力しながら、2021年6月に「森のようちえん つむぐり」を加陽水辺公園・加陽湿地に活動拠点として立ち上げました。
「子どもたちが豊かな自然の中で、好奇心や関心を大事にして遊びながら育っています。地域のさまざまな人々や関係機関と協力して、この活動の立ち上げ・運営の支援をできて良かったです。活動に関わる人々や利用する参加者も少しずつ増えており、地域や社会に意義のある取り組みだと改めて感じています」
本屋のスタート、そして新たな挑戦
2023年12月末で3年間の協力隊の任期を終了した武藤さん。これから本屋「Wind-up Bird」を本格的にスタートします。
「本屋を開く場所は、『大石家住宅』という文化財に登録されている古民家の蔵です。約3年前に地域のご縁で出会った当初からこの建物に魅力を感じていました。この蔵を利用できることになり、『森のようちえん』の仕事の合間に、開店に向けて準備をコツコツ進めていました」
移住前からの夢を形にしてきた武藤さん。今後は会社経営にも挑むそうです。
「学生・会社員の時の縁で、リモートでお仕事の依頼をいただくことになり、その流れで1人社長の会社を設立しました。会社を持つってどんな感じだろうという好奇心からですね。本屋を継続的に運営することは簡単ではないので、会社で依頼をいただく仕事とバランスを取りながら進めていくつもりです」
地域の人とのつながりを大切にして、自分がしたいことを実現する
最後に、地方への移住を考えている方へのメッセージをいただきました。
「人生一度きりなので、移住して自分が実現したいことがあるならチャレンジしてみたらと。ただ、自治体によって特色や制度等が異なるので、自分がやりたいことや理想の生活など自分の状況に合いそうな地域を見つけて移住するのも大事ですね」
加えて、地域に住む人々との良好な関係性を築くことが不可欠と語ります。
「外から来た人が、地方で自分の力だけで夢を叶えるのは難しいかもしれません。地域の人たちの協力や理解があって、自分の実現したいことが前進していきます。そこに住む人たちと良いつながりを築けるかが大切ですね。移住する前に、まず地域で生活する人や事業を行う人に会って交流してみるのはおすすめです」
豊岡市地域おこし協力隊OB、「株式会社ねじまき鳥」代表取締役、本屋店主 武藤 保貴さん / むとう やすたか
1993年生まれ。大阪府出身。京都大学文学部卒業。大学では過疎地でのフィールドワークを専攻。都内のインターネット関連企業で人事・経営企画として約4年間勤務後、2021年1月豊岡市へ移住。地域おこし協力隊として、「森のようちえん つむぐり」の立上げ・運営を支援。現在は、自身で作った本屋「Wind-up Bird」の営業と会社経営も行っている。
■関連リンク
- 森のようちえん つむぐりInstagram(@mori_tsumuguri)
- 本屋「Wind-up Bird」【Instagram】/【X(旧Twitter)】