県をまたいで隣町へ移住。夫婦二人三脚で、安心でおいしい、いちごを届けたい
いちご農園「うた農園」経営 高橋 豪さん
- 移住エリア
- 静岡県→愛知県新城市
- 移住年
- 2019年
「思いを実現するのはなかなか難しかった」と語る高橋豪さん。移住と共に新規就農という夢を実現しましたが、その道のりは決して平坦ではありませんでした。新規就農の苦労や現在の悩みだけでなく、リラックスできる新城市での暮らしや地域の人たちとの交流など、様々な困難を乗り越えて手に入れた充実した生活について、赤裸々に語っていただきました。
目次
生活リズムが合わず、自然を求めた日々
新城市に移住したのは2019年9月です。新規就農を目的に、隣の静岡県浜松市から家族4人で移住してきました。1年間の農業研修を経て独立。現在はビニールハウス6連棟の農園で、妻と一緒にいちごを栽培しています。
農業に興味を持ったのは30代の中頃です。実家がある浜松市は自動車工場が多く、20代半ばから10年ほど様々な工場で期間従業員として働いていました。給料もある程度もらえるので続けていましたが、夜勤で生活リズムが崩れるなど、体に合わないのを感じていたんです。次第に自然を求めるようになり、「田舎で農業をやりたい」と思うようになっていました。
手厚いサポートで新規就農を実現
ただ、思いを実現するのはなかなか難しかったです。地元でも新規就農の相談をしたり家を探したりはしていたんですが、思うようには進みませんでした。ようやく就農への道が開けたのは5年ほど前、新城市の新規就農説明会に参加してからです。
浜松市と新城市は、県は違えど隣町なので、以前から温泉や山に遊びに行っていました。実家からは車で40分ほど。引っ越し感覚で移住できるのも魅力でしたが、決め手となったのは新規就農者への手厚いサポートです。農業研修はもちろん、農地や家探しも親身になって手助けしてもらえたのは、本当にありがたかったです。
夫婦でいちご栽培に奮闘
妻には移住前から農家になりたいと話していましたし、移住先がなじみのある地域だったので、すんなり受け入れてくれました。市が定めた奨励品目(トマト、いちご、ほうれんそう)の中でいちごを選んだのは「やるならいちごがいい」と、妻が言ったからです。
移住して1年間はベテランのいちご農家で研修を受けました。農業は一人でするつもりだったのですが、研修先の方が「奥さんも手伝うことになるだろうから」と、繁忙期にバイトとして手伝わせてくれて、二人でノウハウを学ばせていただきました。独立する際、妻に手伝ってもらった方がうまくいきそうだったので、夫婦で「うた農園」を始めたんです。
ただ、習うのとやるのとは違っていて、1、2年目は息苦しいというか、心が落ち着かない状況でした。農薬を極力使わない減農薬で栽培する難しさもあり、研修先の師匠にフォローしてもらいながら、なんとか乗り切れた感じです。3年目からはようやく思うように栽培できるようになり、収量も2反(約2000平方メートル)で10トンほどになりました。繁忙期は二人だと手が回らないので、パートの方にお願いして作業しています。
いちごのシーズンは11月~翌5月くらいです。オフには結構休めるかなと思っていたんですが、苗づくりなど次に向けての準備があって、思ったより忙しい。自分たちのペースで仕事ができるのは嬉しいんですが、もう少し休めるといいなというのが目下の悩みですね(笑)
一緒に過ごす時間が増え、家族との距離が縮まった
移住して良かったのは、家族との時間が増えたことです。忙しいとはいえ妻とは一緒に仕事をしているので、休みに遊びに行くのも行きやすいですし、家からビニールハウスが近いので、子供たちもよく手伝いに来てくれます。家族の距離が近くてアットホームな雰囲気の中で生活できるのは、すごくいいですよ。
新城市は程良い田舎で、リラックスできる街です。移住したのは旧鳳来町にある山間の集落。市内より過疎化が進んでいることもあり、地域の皆さんがとても歓迎してくださって、打ち解けやすかったですね。以前は実家に住んでいたので子供たちはおばあちゃんと離れるのが寂しそうでしたが、ご近所の方が自分の孫のように可愛がってくださって、今ではいろんな人に懐いて楽しそうですね。これからも自然に囲まれたこの場所で、家族と豊かな時間を過ごしていきたいです。
仕事については生産を安定させて、もうちょっと出荷量を増やしたい。今作っているのは「紅ほっぺ」という品種ですが、将来的には新しい品種も栽培してみたいと思ってます。「うた農園」は、娘2人の名前から一文字ずつ取って名付けました。少しでも多くの人に安心しておいしく食べてもらえるいちごを、子供たち同様、夫婦で育てていきたいと思っています。
(※このインタビューはふるさと回帰支援センター発行の情報誌「100万人のふるさと」2024早春号掲載の内容をWEB用に一部再構成したものです)
いちご農園「うた農園」経営 高橋 豪さん / たかはし ごう
1979年東京生まれ。自動車工場の期間従業員を経て2019年移住、いちご農家へ。現在は、娘たちの名前から一文字ずつ取って名付けた「うた農園」を営む。夫婦・子2人の4人家族。
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