愛知・三河の山里の古民家に住んで、アメリカにはない古くからの「日本」を味わう
翻訳業 マートネック・ドリューさん
- 移住エリア
- アメリカ・ミネソタ州→愛知県豊田市
- 移住年
- 2021年
豊田市といえば、世界に冠たるトヨタ自動車の企業城下町というイメージが強いですが、2005年に三河地域の周辺6町村を合併して広大な山村地区を抱えることになり、にぎわいと過疎の二面性を合わせ持つ自治体になりました。その旧足助町の山里にある古民家に夫婦で移住したのが、日本と日本語に魅せられたアメリカ出身のマートネック・ドリューさん。
近隣の集落まで歩いて20分以上かかるという山の中。でも、ネットで世界とはつながっているし、周りは面倒見のいい方ばかり。不安はあったものの、実際に住んでみると不便は感じず、「慣れれば都」と言います。
目次
アニメを観て日本語に興味を持ったのが縁
「日本ダイスキ、三河の山里ステキ、古民家カイテキ、日本人の奥さんダイスキです」と、流暢な日本語で楽しそうに話すマートネックさん。日本語に魅せられたというだけあって、ネイティブの日本人そのものです。
マートネックさんはアメリカ合衆国の中西部に位置するミネソタ州で生まれ育ちました。アニメやマンガが好きで、たまたま日本のアニメを観て日本語に興味を持ったのが、日本との縁の始まり。高校時代に交換留学で日本を訪れ、すっかり日本に惚れ込みました。進学したのは、ミネソタ大学の東アジア研究科で、在学中に名古屋市内の大学に半年間留学。
「卒業したら日本で仕事がしたい」と、見つけたのが全国に展開する英会話学校の講師の職。念願かなって来日したのは2010年、24歳の時でした。
留学中に出会った日本人の彼女に再会したくて…
東海地方の教室を選んだのは偶然ではありません。実は、留学中に学内で出会った、後に伴侶となる緋奈さんに再会したかったから…。愛知県岡崎市生まれの緋奈さんは、大学卒業後、航空会社の客室乗務員(CA)として全国を飛び回っていました。
28歳の時に同い年の2人は結婚し、愛知県内に新居を構えました。マートネックさんは、英会話講師から翻訳業に転身、インバウンドの外国人向けに観光情報などを発信する名古屋市内の会社に籍を置きました。
人里離れた集落の古民家に夫婦で移住
アグレッシブで行動的な二人は「都会もいいけど、山村で暮らしてみよう」と思い立ち、空き家バンクで古民家を探し始めました。3軒目に出会ったのが、旧足助町の山間にひっそり建つ築100年を超えるという古民家。家賃は月3万円。わずか5軒ばかりの人里離れた小さな集落でしたが、すっかり気に入り、2021年春に引っ越しました。
名古屋市内の勤務先までは、車と電車を乗り継いで約2時間。さすがに遠くて通勤を断念。地元の豊田市が運営する観光組織が新たな活躍の舞台になりました。
ネットがあるから生計を立てるのに困らない
「山の中にいても、ネットとパソコンがあれば、翻訳の仕事はできる」と自信を深め、2023年夏に独立。これまでの縁もあって、愛知県内の自治体の観光協会などのサイト(ホームページ)やソーシャルメディア(SNS)の翻訳を広く請け負っています。
緋奈さんも、インドでヨガや呼吸法瞑想のインストラクターの資格を取得、その後、ホットヨガの講師として生徒たちを直接指導していましたが、今では主にボランティアで、自宅にいる生徒たちをオンラインで結んで教室を開いています。先生も生徒も、居ながらにして、瞑想や呼吸法、ヨガのポーズで心身をリフレッシュできるメリットは大きいそうです。
二人とも、口をそろえて「ネットがあるから生計を立てるのに困りません」。
自給自足の暮らしの夢にチャレンジ
もともと、自給自足の暮らしにあこがれていたマートネックさんは、「チャレンジすることが大好き」で、自ら傷んだ古民家を修繕し、斧で薪を割ってはストーブにくべています。ささやかな田畑では、無農薬のコメづくりに挑戦、ネギやダイコンなどの野菜を育て、味噌づくりも始めたとか。最近は「パソコンの画面ばかりにらんでいては、疲れる」と、さらに山深い旧稲武町で造園業を営む友人の手伝いに出かけることも。
近隣の住人は、新参者にも親切で、おすそ分けの食材は食べ切れないほど。
近くの街に買い物に行くのに車で40分ほどかかるといった不便さはありますが、ネットライフのメリットを存分に活かして、忙しくても楽しい毎日を過ごしているとのこと。「とっても恵まれていて、楽園にいるみたい」と、山里の暮らしに親しんでいます。
そのため、3年契約の更新に訪れた大家さんに「30年でも、40年でもOK」と返事をしたら、びっくりされてしまいました。
「山里の古民家の暮らしは、日本の文化や歴史を体感できます。日本での暮らしは、アメリカとはまったく違うんです。ここに来て本当によかった」
翻訳業 マートネック・ドリューさん
1985年、アメリカ・ミネソタ州生まれ。幼い頃に見たアニメがきっかけで日本に興味をもち、高校や大学時代に日本へ留学。ミネソタ大学を卒業後、英会話学校の講師として来日。その後、名古屋市内で観光情報などを英訳する翻訳業に従事。
2021年に豊田市足助地区の古民家に移住。その後独立し、現在は愛知県内の自治体がウェブやSNSで配信する観光情報の英訳などに携わっている。