ネルドリップで抽出した珈琲とおやつで、陶都・瀬戸の空間でホッと一息つける時間を提供したい
カフェ「ie珈琲(いえこーひー)」経営 小栗 麻由香さん
- 移住エリア
- 岐阜県→愛知県瀬戸市
- 移住年
- 2021年
1000年以上の歴史を誇る「陶都・瀬戸」の商店街に、2023年4月にオープンしたばかりのまちづくり拠点「瀬戸くらし研究所」の一角で、カフェ「ie珈琲(いえこーひー)」を開いた小栗麻由香さん。小さいころから「食べることやお菓子づくりが大好き」で、一生懸命つくったおやつを家族が喜んでくれたことをきっかけに、「飲食することで笑顔になり、私も来てくれた方も癒されるお店をつくりたい」という夢の第一歩を踏み出しました。
目次
珈琲がないと生きていけない
生まれ育ったのは、岐阜県瑞浪市の片田舎。早くから料理や菓子づくりに目覚め、高校は迷わず食品科に進学、卒業後は浜松市の調理製菓専門学校へ。2年間、和洋中の料理や製菓、カフェドリンクの基本を勉強しました。調理師と製菓衛生師の資格を取った後、岐阜県多治見市の結婚式場や愛知県日進市のレストランで腕を磨いていたのですが、名古屋市内のカフェに勤めていたころのことです。
「疲れ果てた時に、ふらっと入った喫茶店のネルドリップ珈琲を飲んだ瞬間、『珈琲がないと生きていけない』と直感し、そのお店で珈琲の修行を始めました」
瀬戸焼に出会って
その後、多治見市の介護施設で調理師として働くようになるのですが、その時にたまたま住んだのが県境を越えた瀬戸市でした。
「県をまたぐというと、すごく遠いような気がするんですが、実は、車ならすぐなんです。ここで、素敵な瀬戸焼の珈琲カップや食器に出会いました。近くには、おいしい珈琲豆の専門店もあって、すっかり瀬戸の街が気に入ってしまいました」
しばらくして、瀬戸市内の中心部にあった時間貸しのシェアキッチンを見つけ、「お店を出すトライができる」と、さっそく申し込んだのです。
「お店を開くのは、不定期に月数回。だから、開店時間の案内はインスタグラムで発信する程度でした。でも、継続していくことで少しずつ、瀬戸のみなさんに認知していただけるようになりました」
心の癒されるまろやかなネルドリップ珈琲
そのお客さんの1人から紹介されたのが、2023年4月オープンの「瀬戸くらし研究所」への出店。商店街で長年シャッターを閉じていた建物を再生して街の活性化の拠点として立ち上げた民間施設で、いずれ独立して店を構えようとする起業家のためにチャレンジしやすい環境を用意しており、起業家を支援する場となっています。
この場の存在を知り、小栗さんのチャレンジ魂に火がつきました。
「『ie珈琲(いえこーひー)』の看板を掲げました。自宅でくつろいでいるようなカフェをめざしているんです。メインメニューは、私の大好きな深煎りのネルドリップ珈琲。ネルを使って一杯ずつ抽出する珈琲は、手間はかかりますが、ホッと癒される味です。飲んでいただければ違いがわかります」
メニューには、ネルドリップ珈琲に合わせた軽食やおやつ、アレンジドリンクも並んでいます。毎日、9時から18時まで(火曜日と水曜日は休み)、1人で奮闘しているので、目の回るような忙しさとか。でも、それも楽しんでいるそうです。
瀬戸市で職住一体のカフェをつくりたい
いずれ自分の店を持つことが夢ですが、ただの店ではありません。小栗さんには「お店の哲学」があります。
「職住一体のカフェをつくりたいんです。仕事は生活の一部だと考えています。まもなく結婚します。家族が増える可能性もあります。でも、職場と住居が別だと、仕事も家庭も中途半端で、いずれもおろそかになりかねません。長く仕事を続けていくためには、とても大切なことなのです」
そして、その場所は、瀬戸市内で見つけたいと言います。
人のつながりがどんどん広がる
というのも、瀬戸市に住む人たちの魅力に気づいたからです。
「私は岐阜の田舎育ちで、名古屋の都会にも住んだことがありますが、それに比べると、瀬戸は人のつながりがとてもおおらかで寛容なんです。新参者が受け入れられにくい地域もあると聞きますが、ここは世話焼きの人が多くて、かといって私生活にズカズカ入り込んでくるようなことはありません。年配の人ばかりでなく、若い人だってそうなんです。瀬戸に来てから、人と人とのつながりがどんどん広がってきて、とても居心地がいいんです。きっと、全国から集まってきた陶工を受け入れてきた歴史と文化があるからではないでしょうか」
瀬戸市で、新たな居心地の良い場所づくりは始まったばかり。不安よりも、はるかに期待が大きいようです。
カフェ「ie珈琲(いえこーひー)」経営 小栗 麻由香さん / おぐり まゆか
1995年岐阜県瑞浪市生まれ。岐阜県内の高校を卒業、静岡県浜松市の調理製菓専門学校へ。調理師と製菓衛生師の資格を取得し、岐阜県多治見市や名古屋市のレストランやカフェなどに勤務。
2021年から瀬戸市に移住し、2023年4月に瀬戸市内の商店街のテナントでカフェ「ie珈琲(いえこーひー)」を開店。おいしい珈琲とお菓子を追求している。