長女の小学校入学が契機。二地域居住と人のつながりに大満足
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篠笛・神楽笛奏者 秋吉 沙羅さん
- 移住エリア
- 東京都新宿区とあきる野市(二地域居住)
- 移住年
- 2024年
東京都新宿区とあきる野市で二地域居住を始めた秋吉沙羅さん。「子供を伸び伸び自然豊かな地域で育てたい」との思いから、ふるさと回帰支援センターを訪れました。移住して4か月。地域の伝統の獅子舞に親子で参加したり、家の近くの畑で野菜を収穫したりと毎日の暮らしを満喫しています。「人とのつながりのある暮らし」について、秋吉さんに伺いました。
「自然がある小学校に通わせたい」が発端
「100%、夢が叶った」
篠笛・神楽笛奏者の秋吉沙羅さんは、東京都あきる野市の新居で快哉を叫んでいる。夫の仕事のため、新宿区のマンションを残しながら、自然の中で暮らす二地域居住を選択した結果だ。
きっかけは、長女の小学校入学だった。新宿区の小学校の周りはコンクリートの建物ばかり。校庭は人工芝。秋吉さんの実家は、広島市安佐南区。自然豊かな環境で育ち、都会の小学校通学の様子に「正直しっくりこない」と思った。
当初は、地方との二拠点を考えていた。しかし、遠すぎる。都内でも奥多摩に行けば、自然がいっぱい。友人の勧めで、ふるさと回帰支援センターを訪れ、あきる野市を紹介された。
2024年3月初め、現地に行くと、市役所の担当者が親切に案内してくれた。
最初はスーパーや学校が近くにある便利な場所を案内されたが、「理想はもっと緑があるところ」と伝えると、山あいにある養沢地区に案内してくれた。名勝・秋川渓谷に流れ込む養沢川の両岸だった。そこには、新居候補の空き家もあった。
「ここしかない」と決断すると、あとはとんとん拍子。3月末に荷物を運び始め、二地域居住に入った。
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演奏する秋吉さん©Yukie Komatsu
畑仕事と笛の練習に「最高の環境」
新生活は「イメージ以上」だという。家のそばに畑があり、ナス、キュウリ、トマト、サトイモ、ジャガイモなどがふんだんに採れる。種まき、収穫、草刈りと、それなりに面倒だが、それも苦にならない。都心で育った夫も、畑仕事にはまり、週末には慣れぬ手つきでクワをふるっている。二人の娘(七歳と二歳)も大喜びで、採れたての野菜をその場でかじって、「おいしい、おいしい」と満面の笑顔だ。
秋吉さんは広島にいた五歳の頃から笛の演奏を始め、国内はもとより海外の舞台にも立つ演奏家。「最高の環境」というのは、練習の舞台が激変したからだ。
マンションでは、音が漏れるので、自宅では練習できなかった。今はそれができる。時には昼間、河原を訪れ子どもたちを遊ばせながら笛を吹く。今までの都会生活では考えられない贅沢だ。「おおらかな気持ちで練習できるのは最高」という。
秋吉さんは現在、地元の獅子舞の笛にも挑戦している。近所に住む師匠は、夜に蛍を見ながらよく練習をしているが、川の音に混じって秋吉さん宅に聴こえてくる笛の音は、何とも心地よいのだとか。
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地域の獅子舞に家族で参加
ゆったりとした人のつながりにも大満足
田舎の生活は、土地の人との付き合いで暗礁に乗り上げることが多いが、秋吉さんは「そんなことは全然ない」という。マンションでは隣の人のことは全く知らなかったが、あきる野市では、余った野菜を譲り合うなどで、「顔の見える関係」になった。
都会の友人は、「ものをもらうとお返しが大変じゃない?」という。しかし、田舎では、「余り物のおすそ分け」がメインで、その緩やかな人間関係も心地いい。
7月には土地の伝統の獅子舞があり、長女が装束を着て竹の打楽器を演奏、秋吉さんも笛を吹き参加した。地域の行事に参加するごとに、知り合いも増え、毎日誰かと挨拶や会話があるという。
「これって、防災にはとてもいい」と秋吉さん。近所の人の顔と名前が一致して、どんな人かもわかっているからだ。
自治会に入り、さらに養沢活性化委員会にも入り、果樹園部会に配属された。これからブルーベリーを収穫し、ジャムに加工する仕事がある。秋吉さんはそれを楽しみにしている。また、地域の女性が活動する生協のイベントに参加した際、「ママ友」もでき、ますます充実してきたという。
周囲は高齢者が多い。子どもたちが泥んこ遊びをしていると声をかけてくれるのが嬉しい。
「よそよそしい都会と違って、人と人が触れ合って、心が通っている感じが心地いい」と言う。
新居は、二階建てで部屋は八室。四月には長女の友達が来て二十人で泊まった。秋吉さんは二十人分の食事を作るので大忙しだったが、「こんなことは、マンション生活ではできない」とにこやかに振り返る。
都心に比べると家賃は安価。都心まで1時間で行ける。不満なのは、家が川の近くで、湿気が多いことぐらい。「最高の選択でした」と、秋吉さんは大満足だ。
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縁側で自家製酵素ジュースを飲む子どもたち
(※このインタビューはふるさと回帰支援センター発行の情報誌「100万人のふるさと」2024初秋号掲載の内容をWEB用に一部再構成したものです)
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篠笛・神楽笛奏者 秋吉 沙羅さん / あきよし さら
建築系の夫と子ども二人の四人家族。自身は篠笛と神楽笛の演奏家。
■Webサイト
http://sarahakiyoshi.com/