妻のふるさとが第二の故郷に。夫婦で過ごす、充実したセカンドライフ

団体職員 川原 英司さん
- 移住エリア
- 東京都→熊本県宇城市
- 移住年
- 2022年
2022年に東京から、熊本市に隣接する宇城市に移住した川原さん。ふるさと回帰支援センターの熊本県相談窓口では、50~60代男性からの相談が比較的多いのですが、川原さんの移住はまさにその典型例と言えるでしょう。今回、川原さんに、移住を決めるまでの経緯や現在の暮らしについて伺いました。
目次
踏ん切りをつけるため早期退職。3つの課題解決のため、移住活動を開始!
奥様の出身地が熊本県であること、そして高齢のお母様の介護への心配が、宇城市への移住を決心させた大きな理由でした。
「自分の親にしてあげられなかった分、妻のお母さんには親孝行をしたい。後悔したくないと思いました」
ご両親をすでに亡くされている川原さんは、そんな強い思いを持っていました。
また、東京での仕事は多忙を極め、帰宅時間も遅く、奥様にも負担をかけていたため、環境を変えたいという思いも移住のきっかけとなりました。
移住にあたっては、『マンションの売却』『終の棲家の建築』、そして『就職活動』という3つの課題がありました。これらにはパワーも時間も必要となるため、川原さんは決意を固めるために福祉関係の仕事を退職し、移住活動を開始しました。ふるさと回帰支援センターの熊本県の窓口で移住と就職の相談をしたり、移住セミナーで宇城市の担当者と直接話したりしました。活動期間中は、ハローワークの失業給付などを活用されたそうです。
お子さんたちはすでに自立していたこともあり関東に残りましたが、マンションの売却や移住について応援してくれたとのことです。
熊本に新築する家は、終の棲家として考えていたため、奥様の知り合いである地元の業者に依頼しました。レンガ調の頑丈で素敵な家、そして奥様の理想を反映したキッチンや間取りにこだわった結果、資材不足や材料高騰の影響を受け、完成は予定より3~4か月ずれ込みました。

川原さん夫妻のこだわりが反映された、新しい家
東京にいながらの就職活動
家の完成を待つ間、川原さんは東京で福祉関係の仕事に1年間再就職し、仕事の感覚を維持されていたそうです。
熊本での就職活動では、これまでの経験を活かせる仕事を探すため、ハローワークや熊本県社会福祉協議会のサイトを利用しました。現地での面接の際は、熊本県の施策(視察交通費補助)も活用しました。
福祉の現場は人材不足のため、すぐにでも来てほしいという企業が多いのですが、就職の内定が出ても移住時期と合わなければ採用されないため、東京にいながらの就職活動はそこが苦労した点だったそうです。幸い、内定から移住のタイミングまで勤務開始を待ってくれる企業があり、その企業にご縁を感じ、転職を決めたということです。
熊本へ移住して感じた、嬉しかったことと苦労したこと
「とにかく食事には大満足です。食べ物がおいしい!野菜、果物、お肉、水など、これまでの暮らしでは感じることのなかった『食べること』を実感し、楽しみの一つになりました。手料理もさらにおいしく感じます。妻に感謝です」
川原さんに熊本暮らしの良いところを尋ねると、声を弾ませながらそう教えてくれました。
反対に、熊本暮らしで苦労している点について伺うと、「言葉が分からない時がある(笑)」ことでした。
仕事柄、高齢の方々とも触れ合う機会があり、そこで方言が壁となっているようです。「なおしとって」は何かを修理することではなく「片付けて」の意味だったり、「あとぜき」は戸を閉めることだったり、響きは興味深くても意味が分からず戸惑うこともあるそうです。「移住して2年経ったので、方言にもだいぶ慣れてきましたけどね」とのことでした。

季節の新鮮な野菜や果物が入手しやすい
ゆっくり、じっくり、移住生活を楽しむ
「移住して、趣味の読書を楽しむ時間が取れるようになったのも嬉しいですね」
宇城市には2022年4月にリニューアルオープンした図書館があり、川原さんは週に1回、図書館に通っているとのこと。図書館には美術館やカフェも併設されており、広場ではマルシェもよく開催されているため、奥様と一緒によく楽しまれているそうです。

川原さんがよく行く、宇城市不知火図書館・美術館
生き生きと過ごされているのは川原さんだけではありません。出身地である熊本県にUターン移住した奥様も、とても充実した日々を送っているようです。お母様のお世話や庭の手入れなど、日々の生活を楽しんでいる様子が伝わってきます。
新築の家は、まだまだ細かな手入れをしている最中。近所の子供たちからは親しみを込めて「レンガの家」と呼ばれているそうです。
移住当初は宇城市から熊本市へ通勤していましたが、最近お隣の宇土市へ転籍異動となり、通勤時間は4分の1ほどに短縮されたそう。職場と住まいが近くなったことで、熊本での暮らしに心のゆとりが生まれ、移住から定住へと意識が変化したと感じているようです。
「短期間で全てを知ることは無理なので、時間をかけてじっくりと熊本暮らしを楽しんでいきたい。妻から、熊本のことを少しずつ教わっています」

奥様手植えの梅の木。この木の成長とともに、熊本暮らしが刻まれていく
東京暮らしでは感じられなかった、地元の食材の良さ、食の楽しみ、心癒される何気ない風景。これら全ては熊本に移住したからこそ実感できることで、奥様に改めて感謝する機会も増えたとのこと。
そんな川原さんの次なる目標は、福祉と防災士の知識を融合させ、地域に貢献することです。現在は熊本県防災士アドバイザーとして、防災組織の指導、実践的な防災訓練の実施支援などに関わっています。

宇城市広報誌2023年6月号より(右から2人目が川原さん)
わからないことや不安なことは担当者へどんどん聞こう
川原さんに、移住を考えている方へのメッセージをいただきました。
「相談窓口や役場の移住担当に積極的に相談するのが良いと思います。わからないことや素朴な質問など、どんなことでもどんどん聞くこと。親切に対応してくれると思いますよ」
川原さん自身、宇城市の移住セミナーで役場の担当者と直接話をしたことが、後の宇城市訪問時に市役所を訪れるきっかけになったそうです。事前に担当者と顔見知りになれたことで、市役所への訪問もスムーズになったそうです。
地方への移住が気になる方は、まずは気軽にご相談やセミナーに参加してみてはいかがでしょうか?新たな発見や、移住後の生活を具体的にイメージするきっかけになるかもしれません。

移住後もふるさと回帰支援センターにお立ち寄りいただきました(左・熊本県移住相談員)

団体職員 川原 英司さん / かわはら えいじ
1962年生まれ、富山県出身。東京で福祉の仕事をしていたが、義母の介護のため2022年に熊本県へ移住。