夫の転職で移住した先は自分にとって落ち着ける場所。川沿いのまちでゆったりと子育てする日々

個人事業主 加藤 涼菜さん
- 移住エリア
- 大阪府→愛知県瀬戸市
- 移住年
- 2024年
夫の弘靖さん(右端)の転職先であり、長男の佑君も通う「瀬戸SOLAN小学校」の前で、次男の直君を抱いて立つ加藤涼菜さん
ビルや住宅に囲まれた大阪府吹田市で、働きながら暮らしていた加藤涼菜さんは、夫の転職に伴い、陶磁器産地として1000年以上の伝統が続く愛知県瀬戸市に移住しました。
夏に移住してまだ半年ほどしか経っていませんが、まち中を子どもと歩けば「可愛いね」と声をかけてくれる人々の優しさを感じています。夕暮れ時に、子どもと手をつなぎながら川沿いを歩き、ふと見上げる空は、大阪の都会の空よりずっと広く感じるそうです。家族で過ごす大切な時間をかみしめながら、川沿いのまちでの新しい生活を楽しんでいます。
目次
ワーク・ライフ・バランスを考えたタイミングに重なった夫の転職
大学卒業後、地元の信用金庫で正職員として働いていた加藤さん。職場では人事労務を担当しながら、長男の佑君(8歳)、次男の直君(4歳)を出産しました。育児休暇から復職後は、職場の理解もあり、できるだけ子育てを優先しつつ、仕事との両立に忙しい日々を送っていました。ただ、2人の子育てをしながら正職員として働き続けることに限界を感じ始めていたそうです。ワーク・ライフ・バランスを考え、2024年4月からは、同じ職場の中で勤務時間を調整できるパート職員に働き方を変えました。
そんな時に持ち上がったのが、夫の弘靖さんの転職でした。転職先は、探究学習に力を入れ、英語教育にも積極的に取り組む「瀬戸SOLAN小学校」。2021年に開校したばかりの新しい私立の小学校です。
もともと、のんびりとした田舎暮らしへのあこがれがあったという加藤さん。瀬戸市については全く知らない場所だったそうですが、夫から瀬戸市の印象や「瀬戸SOLAN小学校」について話を聞き、佑君が通うにもぴったりの学校なのではないかと感じ、移住に賛成します。職場には退職を申し出て、一家4人での瀬戸市への移住が決まりました。
移住前に2度訪れ、まちの様子を知る
移住先の瀬戸市については全く知らなかった加藤さん。夫から聞いて初めて「『せともの』の瀬戸なんだ」と知りました。5月には、どんなまちかを知るため家族旅行も兼ねて、2泊3日で瀬戸市を訪れます。
まず心惹かれたのは、尾張瀬戸駅の前を流れる瀬戸川沿いに広がる風景でした。もともと川沿いのまちに住みたいという思いがあったので、嬉しく感じたそうです。駅近くのゲストハウスに宿泊して瀬戸市の雰囲気を感じ、最終日は名古屋市内を観光して大阪へ帰りました。
夏休み明けから学校に通えるように引っ越しをしようと決め、急いで住まい探しを始めます。佑君も弘靖さんの転職先の「瀬戸SOLAN小学校」に通うため、学校まで歩いていける距離にある物件を優先してネットで探しました。一軒家や古民家リフォームへのあこがれもあった加藤さんでしたが、学校から近い賃貸用のマンションに目星をつけます。
6月にも再度、マンションの内覧も兼ねて、夫婦2人だけで瀬戸市を訪れます。物件探しの後に訪れたのが、シェアキッチンやギャラリーなどが入る複合まちづくり拠点「瀬戸くらし研究所」内の飲食店でした。お客さん同士で話すアットホームな雰囲気の中、店主の方に「どこから来られたんですか?」と声をかけてもらったそうです。大阪から引っ越す予定で物件を探していると話すと、その場にいた他のお客さんたちも話を聞いてくれ、目星をつけたマンションでまずは良いのではと、背中を押してもらいました。瀬戸市がどんな街かなども聞かせてもらい、移住後の暮らしのイメージがより固まったそうです。
直君の入園先については、「せっかく郊外に移住するのだから、『森のようちえん』みたいな場所に通わせられるといいな」と漠然と思っていた加藤さん。「森のようちえん」とは、園舎を持たず、森や自然の中で保育活動を行う施設で、瀬戸市にも野外保育施設「もりのね」があることを知り、親子で何度か体験入園しました。子どもをまるごと受け入れてくれるのびのびとした雰囲気と保育方針に惚れ込み、入園を決めました。

次男の直君は瀬戸市初の野外保育施設「もりのね」に通う。お迎えに行くと直君が元気よく加藤さんに飛びついてきた。スタッフの方から保育中の様子を聞くのが毎日の楽しみ
苦手な車の運転も頑張りながら、自然に囲まれた生活を満喫
8月には引っ越しを終え、新学期からはそれぞれ新しい生活が始まりました。佑君は英語学習には苦戦しながらも、のびのびと自由に、自分の好きな分野の勉強に取り組める環境を楽しんでいるようです。加藤さんも、直君の保育園 の活動に積極的に参加しながら、毎日を楽しく過ごしています。
想定外だったことを尋ねると、「子どもだけで出かけられるような距離に公園があまりないことですね。移住前は、郊外での暮らしと言えば、自然の中で子どもが走り回って遊んでいるイメージを持っていたんですが」と教えてくれました。しかしながら、車で少し走れば、自然をそのまま生かした広い公園がたくさんあります。
20年来のペーパードライバーだった加藤さん。自然を楽しむために、苦手な運転も頑張っています。

「川沿いのまちに住みたかった」という加藤さん。瀬戸川沿いの遊歩道はお気に入りのお散歩コース
若い人たちが何かを始めようとしているまちで自分も起業 を
瀬戸市は1000年以上の伝統を持つ陶磁器産地でありながら、近所の商店街では、空き店舗を利用して若い世代の人たちが書店や陶磁器のお店、カフェを開くなど、新しい動きも感じられます。「自分もまちを盛り上げていく輪の中に入りたいな」と思う加藤さん。オーガニック商品や、火を使わないお菓子であるロースイーツなど、これまで学んできた知識を活かして、自宅でワークショップを始めました。ゆくゆくは自分のお店を持ちたいと考えていて、移住前に訪れた「瀬戸くらし研究所」にも足を運び、本格的な活動に向けて少しずつ動き始めています。
「大阪ではお店も多く、イベントもたくさん開催され、楽しい反面、あそこも行かなきゃ、ここも行かなきゃ、とずっとアンテナを張り続けて疲れてしまう感じでした。でもここでは、大阪と比べてイベントなどが少ない分、落ち着けるのがいい。個人のお店を応援する雰囲気もあるこの場所で、自分のやりたいことに挑戦していきたいと思っています」
と話す加藤さん。自分が落ち着けるこの町の雰囲気、生活が気に入っているそうです。まち中をゆったりと流れる瀬戸川のように、人生の大切な時間を穏やかに過ごしながら、新しい挑戦への意欲を高めています。

商店街の中にある複合まちづくり拠点「瀬戸くらし研究所」
■関連リンク
せとで住もまい!きっかけサイト

個人事業主 加藤 涼菜さん / かとう すずな
1988年大阪市生まれ。小学2年生と年少園児の母。大学卒業後、13年間、大阪市内の信用金庫で勤務し、人事労務を担当。ワークライフバランスを考え、正職員からパート職員に働き方を変えたタイミングで夫の転職が決まり、2024年8月に一家で瀬戸市に移住。現在は子育てと並行して、手しごとをみんなで楽しむスペース「yane.」を運営。
■Webサイト
オーガニックな商品と、手づくりを楽しむ場所「yane.」