『ぜいたくな田舎』南房総で 楽しく、忙しく暮らす
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フリーランスデザイナー 工藤 紘佑さん
- 移住エリア
- 東京都→千葉県南房総市
- 移住年
- 2020年
工藤さん(右)とご家族
地方での暮らしはのんびりしている―。そんなイメージを覆す現実を語る工藤さん。「東京より忙しくて、のんびりどころじゃありません」と笑います。
工藤さん夫婦は、そろってアウトドア好き。趣味のキャンプと移住先探しを兼ねて各地を巡るなか、ピンときたのが南房総市のキャンプ場でした。移住後、関わる人や時間の使い方など、生活が一変したそうです。
様々な移住先を検討する中で、なぜ南房総市に惹かれたのでしょうか?詳しくお話を伺いました。
目次
移住をして地域との関わり方が、ガラリと変わった
東京の多摩市から妻と当時1歳の息子と3人で移住しました。移住前はメーカーで商品開発をしていましたが、移住を機に独立し、フリーランスのデザイナーとして活動しています。
2年前に移住し、今は海まで車で5分くらいのところに一軒家を借りて住んでいます。住む場所はもちろん、会社員からフリーランスになったこともあり、関わる人や時間の使い方など、生活が一変しました。
特に地域の人とのつながりが濃くなりましたね。集落には畑をしている年配の方が多いので「野菜とりにおいで」と声を掛けてもらったり、草刈りや清掃を一緒にやったり、仲良くしてもらっています。
また、三芳エリアで古民家と里山をみんなでシェアする活動や、隣接する館山市の駅周辺のまちづくりなど、あちこちに顔を出して地域の人達と一緒に活動しています。
今夏は千葉県の伝統的工芸品に指定されている「房州うちわ」を職人さんとコラボで形や模様をデザインさせてもらいました。
房州うちわは今、世代交代の時期で、ベテランの職人さんのあとを継ぐ方々が頑張ろうとしています。微力ながらその応援ができれば嬉しいですね。僕はデザインや販売応援など外部ならではの視点で参加して、うちわだけでなく、地域全体が盛り上がればいいなと思っています。
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工藤さんがデザインした「房州うちわ」
東京より地方の暮らしの方が忙しい!?
移住する前は、どちらかというとのんびり暮らすイメージだったんですが、実際は東京より忙しくて、のんびりどころじゃありません。地域との関わりもそうですが、庭の草刈りなど東京暮らしにはなかった時間が増えました。
移住前は夫婦ともにキャンプや登山などのアウトドアが好きで、週末はほとんど東京にいないような暮らしをしていました。それが移住を考えたきっかけなのですが、今は自然に囲まれているので、わざわざ行かなくても普段の生活で満足できるようになりましたね。
移住当初ペーパードライバーだった妻は、思うように移動できないのがストレスだったようです。運転するようになった今は、野外保育の幼稚園で息子と一緒に自然に触れたり、ママ友のつながりができたりと、楽しそうにやっています。息子は大丈夫かなっていうぐらいのびのびしてますね(笑)。
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海遊び
キャンプをしながらの移住先探し。刺身と空気感を味わう
移住しようと思ったら、実際に足を運んでみることが大切だと思います。地域情報は本やネットで調べることもできますが、あまり頭でっかちにならずに、その土地に行ってみて「移住したいな」「ワクワクするな」という気持ちを確認するのがお勧めです。
僕達が移住を検討し始めたのは5年ほど前。「世の中には移住という選択肢もあるらしい」と気が付いて、移住相談窓口やイベントに出掛け、「全国にはこんなにたくさんの自治体が移住を歓迎しているんだ」と知ったのが始まりです。そのあとは趣味のキャンプを兼ねて、静岡県から青森県まで太平洋沿岸部の自治体を妻と二人で回りました。
海沿いに限定したのは二人とも魚が好きだからです。移住するなら刺身がおいしいところと決めて、現地で刺身を買い、キャンプをしながらその土地の空気感を確かめました。
そんな中、ピンときたのが南房総市のキャンプ場です。実は母の出身地で、白浜エリアには幼い頃よく遊びに来ていました。本当に偶然ですが、無意識に感じるものがあったのかもしれませんね。
地域の人柄と、『ぜいたくな田舎』が南房総の魅力
候補地を南房総市に絞ってからも、市が主催する移住ツアーに参加するなど何度も足を運びました。南房総市は三方が海に囲まれた半島にあり、海だけでなく里山の風景も味わえます。一方で高速バスに乗れば90分で東京に行けるので、東京での仕事や遊びを切り離さなくてもいいのも魅力。『ぜいたくな田舎』だと思います。
移住の決め手は地域の人柄です。印象的だったのは、移住ツアーで案内をしてくれた市の職員の方と民間の方の仲の良さですね。地方に来ると官民関係なく、地域に住んでいるみんなでワイワイ楽しくできるんだというのを、肌で感じました。あの時の思いは移住してからも変わりません。みんなで地域を盛り上げようとする心意気に触れたことが、今の活動につながっている気がします。
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里山遊びの様子
若い人が増えるような仕掛けを作っていきたい
移住で大変だったのが、家の問題です。僕達もそうでしたが、南房総市は賃貸物件が少なくて、移住したくても思ったようにできない。将来的に家を建てるなら、シェアハウスなど移住者を受け入れられる面白い住まい方ができるといいなと思っています。
高齢地域はどこもそうだと思いますが10年、20年後を考えると、心配な面はあります。一方、東京に疲れている人の存在もひしひしと感じるので、そういう人が移住してくれるといいなと思います。若い人が増えると活気も出ると思うので、まずは気軽に来てもらえるような仕組みを作っていきたいですね。
(※このインタビューはふるさと回帰支援センター発行の情報誌「100万人のふるさと」2022夏号掲載の内容をWEB用に一部再構成したものです)
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フリーランスデザイナー 工藤 紘佑さん / くどう こうすけ
東京にてメーカー勤務(制作部門)。2020年6月に移住を機にフリーランスデザイナーへ。家族構成は夫婦と子供1人