旅を通じて自然の素晴らしさと生きる歓びを伝えること
旅とPizzaとお宿 「咲色〜Sairo〜」運営 粟田 誠士さん
- 移住エリア
- 関西→北海道上士幌町
- 移住年
- 2021年
上士幌町は、北海道十勝地方の北部、日本一広い国立公園である大雪山国立公園の東山麓に位置し、町内の8割が森林地帯と自然豊かな町。そんな上士幌町で『旅とPizzaとお宿 咲色〜Sairo〜』 を営む粟田誠士さん(愛称:Mark)と、みさきさん。
神戸で生まれ育ち、アウトドア関連の仕事をされていたMarkさんが2021年夏、京都で生まれ育ったみさきさんとともに関西から移住し上士幌町でお店をひらくに至ったストーリーをお聞きしました。
目次
自然の中の暮らしに憧れて
2017年、Markさんは北海道に移住する前は大阪の都市部に住んでいました。その頃からやんわりと北海道に移住したいと思っていたそうです。
「初めて知床に訪れたときに、(みさきさんに)冗談混じりに北海道に移住したいと話をしました」
ですが、移住することに不安があったため、まずは住み慣れた街の近くに移住をしてみることにしたそうです。
「自分達が本当に北海道で生活ができるのか分からないから、まずは大阪の田舎に移住するチャレンジをしました」
一方、みさきさんは移住に関して特に不安はなかったとのこと。
「不安というよりは、楽しみでした。ふたりでやっていく分には大丈夫と思っていたので、前向きに考えることができました」
大阪での田舎生活をしているうちに「自然の中で生活したい」という気持ちが強くなり、 2018年の秋に移住を決意。北海道の移住先を探している中、上士幌町に目が留まり、2019年の冬に移住体験を始めました。
十勝晴れに導かれて上士幌へ
「北海道に住みたいと前から2人で考えてはいましたが、冬の暮らしが一番心配なことでした。なので、まずはお試し移住のようなかたちで一番寒いときを体験できる上士幌町 を選びました。最初は富良野や美瑛に移住を考えていたので上士幌町を拠点に冬の北海道を色々巡ってみようという気持ちでした。でも移住体験の約2週間で考えが変わりました。そのときの暮らしがすごく良かったんです」
その理由は、上士幌町の晴天率。十勝地方は、年間を通じて全国的にも有数の日照時間に恵まれ、特に秋から冬にかけて「十勝晴れ」と呼ばれる晴天が続きます。移住体験をしていた期間中、上士幌町はほとんど晴れていているけれど、札幌など北海道の西側は毎日雪がすごかったと言います。
最初の候補地であった富良野や美瑛も、移住体験中に訪れてみましたが同じ理由で十勝に心が傾いていったそうです。
「上士幌町の冬はすごく寒くても清々しくて、住み続けるのであればやっぱり晴れている日が多い方が気持ちも明るくなるな、とそのときに思いました。晴れている日が多く比較的雪の少ない十勝なら、本州からの移住でも住みやすいと思います」
繋いでくれた不動産屋さん
「最初は絶対に上士幌町に移住しなきゃって思っていたわけじゃなくて、縁があればと思っていました。そんななか移住体験でお世話になった人が不動産屋さんを紹介してくれて。その方が一生懸命移住の候補地を探してくれたんです。希望に合うこの土地を見つけた時も売地じゃなかったけど、僕らが気に入ったからということで地主さんに交渉してくれて。それでこの土地を売ってもらえたんです。不動産屋さんの尽力と人柄に感謝してもしきれません」
人から人へ想いが伝わり、Markさんは移住を決意しました。
旅は人生を変える
「旅は人生を変える、そして世界を変える信じている」と話すMarkさん。ご自身も学生のときに関西から北海道まで旅をしたそうです。そのときに牧場で数日間テント暮らしをして、牧場で見た夕日や降るような星空に感動したことが全ての始まりだったと教えてくれました。
瞳を閉じて思い出せば昨日のことのように思い出せる。心揺さぶる大自然の宝庫「北海道」をたくさんの人に旅してほしい。そしてせっかく旅をするのであれば、とっておきの宿と食事と風景を味わってほしい。そんな想いから『旅とPizzaとお宿 咲色〜Sairo〜』を2022年3月にオープンしました。
こだわりのピザとキャンプステイ
咲色は完全予約制でランチとディナー、そしてキャンプステイを利用することができます。
「ランチは帯広市や音更町からお越しになる方が多いです。来てくれた方の口コミで、その知り合いの方々が来てくれる。ディナーの予約はほぼ町民の方で埋まります。帰省や誕生日など、特別な時間を過ごしてもらえています」
ピザを使って上士幌町や十勝・北海道の魅力を発信したい、と話すMarkさん。地域の旬な食材を使うことで地域を知ってもらいたいという想いがあるとのこと。やまいもやブルーチーズを使った使った春限定ピザなどオリジナルメニューを豊富に用意し、季節ごとにメニューを入れ替えているそうです。
キャンプステイは、本州に住んでいる人でも北海道の風景を気軽に、存分に楽しむことができるよう、キャンプに必要な道具やテントの組み立てがすでにされている初心者向けの食事つき宿泊プランです。手ぶらで訪れて利用することができます。
「キャンプステイは、関東圏や札幌圏から来る方が多いです。30、40代のご夫婦でどちらかがキャンプ初心者という方が多いですね。ディナーやキャンプでは時間を忘れるようにゆっくり過ごしてほしいと思います」
上士幌町という場所
「上士幌町の人たちは温かくて距離感がちょうどいい」
前述した移住体験でお世話になった人や不動産屋さんの温かさに触れたMarkさんとみさきさん。
「都会ほど疎遠じゃないし、小さい集落ほど近すぎない感じで、自分が繋がろうと思えば繋がれるし、自分の時間を大切にしたいなと思ったら大切にできるこの距離感が気に入っています」
近隣の農家さんともいい関係を築いています。
「移住した当初から近所の農家さんに声をかけていただき、搾乳のお手伝いなどさせてもらいました。同年代の方もいて気軽に手を貸してくれることが嬉しいです。お店にも食べにも来てくれて、とても応援してもらっています。
市街地と少し距離が離れているため他の移住者より町の人と関わる機会が少ないと思っているのですが、お店がちょっとずつ認知されてきたので町民の方にも利用してもらえるようになりました」
宿泊は町民には使ってもらえないかもしれない。けれど、飲食店を経営することで上士幌の人たちに何かしら貢献できるのではないか、という想いで始めたピザの提供。自分達らしい地域との関わり方が実現できているようです。適度な距離感で、何かある時は助け合える。そんな関係性を、Markさんとみさきさんは気に入っています。
最後に、移住後の上士幌町での生活についても聞いてみました。
「上士幌町はインフラも整備されていて公共のサービスがしっかりしています。図書館があったり健康診断も やっていたり、暮らすのに最低限必要なものが揃っていて不満はありません。唯一不便だなと感じるところは、贅沢をしようとすると札幌や帯広に行かなくちゃいけないこと。でも年に一回二回の楽しみと捉えて上士幌の生活を楽しんでいます」
旅とPizzaとお宿 「咲色〜Sairo〜」運営 粟田 誠士さん / あわた まこと
関西で子ども向けのキャンプを企画・運営する仕事を16年。2021年夏、関西から北海道上士幌町へ移住。現在は北海道の暮らしを満喫しながら、「旅を通じて自然の素晴らさと生きる歓びを伝えること」をモットーに『旅とPizzaとお宿 咲色〜Sairo〜』を運営。
■旅とPizzaとお宿 咲色〜Sairo〜
- WEBサイト:https://sairo.localinfo.jp/
- Instagram:@sairo_kamishihoro