花屋から花農家への転身~北海道で花を育てて~
花農家 T・Yさん
- 移住エリア
- 東京都→北海道深川市
- 移住年
- 1997年
北海道のほぼ中央に位置する深川市は、四季の移ろいが美しく、田園風景の広がるのどかで暮らしやすいまちです。農業を基幹産業とし、「ゆめぴりか」や「ななつぼし」などのブランド米の一大産地であるほか、スターチスなどの切花の生産が北海道中1位です。
そうした中にあっても、農業を始めるというのは簡単なことではなかったようです。花農家として就農するまでの経緯や、深川の魅力などをお二人に伺いました。
目次
花ならいいよ
東京の農業大学在学中にアメリカで農業研修を受けていたTさんは、いつかは農業をやりたいと思いつつも大学卒業後は大手花卉会社に就職し、都内のホテルの中にある花屋で働いていました。
花屋時代に妻・Yさんと出会い、「実は農業をやりたいんだ!」と伝えたところ
「花ならいいよ」とYさんが答えたそうです。
花屋で仕事をするうちに花業界も面白くなり、「花もいいかぁ」と思え、そこからお二人で都内にあった全国規模の就農サポートセンターへ相談に行きました。
しかし1997年当時はまだまだ情報が少なく、「花農家希望」と伝えても門前払いだったそう。
北の大地北海道へ、そして深川へ
そこで、次にお二人が向かったのが北海道農業担い手センターでした。花屋で勤務している時、夏場のきれいな生花として北海道の花が目につき、「北海道で切花の生産をしよう!」と思ったことがきっかけでした。
そこでも「畑作と酪農ならいくらでもあるけど花はないねぇ」と言われたそうです。
でもムリを承知で「施設園芸希望」と登録して帰って来たところ、2~3ヵ月後くらいに北海道南部のある地域から声がかかりました。
「せっかく北海道まで行くなら他の花農家も見たい!」
そう思ったTさんはアメリカ農業研修で知り合った方々にお願いし、いくつか農家さんを紹介してもらい、その中に深川市の農家さんもあったそうです。
「もちろん他のまちも見て回りましたが、花屋の仕入先から『花を育てるなら深川がいい』『切り花の産地として将来性がある』という後押しもあり、深川へ行ってみることにしました。」
「深川では紹介してくださった方との繋がりから、たくさんの人とご縁をいただき、東京に戻ってからも出会った人達のこと、広い空と大地が忘れられませんでした」とYさん。
実際研修を受けてみると花を育てるのにものすごく適した環境であることと、まちの人達や農家さんとの繋がりから「ここで花を育てよう」と、お二人は深川への移住を決めました。
100年に一度。50年に一度を乗り越えて。
実際に農業を始めてみての感想を伺うと、「もぉー大変!!なんて言っちゃダメかしら」。
お二人は笑顔で当時の苦労を語ってくださいました。
「移住してくることよりも営農すること、そして続けていくことのほうが何倍も大変ですね。うちは営農して2年目に100年に一度の風でハウスが壊されて、その2年後には50年に一度の風でハウスが壊されて…『なんじゃそりゃ』ってなりました(笑)」
それからは、そんな風にも負けないもっと強いハウスを建て、今に至るそうです。
「新規就農に対する不安やプレッシャーはひとことじゃ言い表せないですね。失敗も多く、苦労の連続とも言えます。でもそれに比例して喜びも大きくなりました。」
でも、そんな苦労の中にあっても花農家を続けてこられた理由を教えてくれました。
「深川は花農家としてやっていくには最高の環境で、昨年設立20周年を迎えた『北空知広域農業協同組合連合会』というところで『北育ち元気村~ホクレンの花~』として全国販売してくれているので、生産者は品質のいい花を育てることに集中できます。みなさん花育てましょう!」
地域の繋がりが安心と幸せ
北海道へ移住し、就農してから二人のお子さんを出産し、農業と育児を両立してきたYさんは「子育てしていると本当にここでよかったなぁ」と思うそうです。
「朝、子どもたちがバスで学校へ行く時、バス停までの道のりを自宅の窓から見ていると、近所の人が子供達に声をかけてくれているのがわかって、地域の繋がりを大切にしている人達の中で育児ができるというのは、一番の安心と幸せだなぁって感じます。花農家の仕事をしながらの子育ては苦労がないわけじゃないけれど、楽しいことのほうが多いですね。」優しさが溢れる笑顔でそう語るYさん。
最近はお子さんたちに手がかからなくなってきたので、学校で絵本の読み聞かせをしたり、花屋時代の経験を活かして市内で花に関する講習会を開催するなど、幅広く活動されています。
移住を考えるならまずは足を運んで
最後に、移住を考えている方にYさんからメッセージをいただきました。
「深川のオススメポイントは『広い空』そしておいしい『お米』、それに野菜もおいしい。あとはキレイな病院があるので、安心して暮らせるところですかね。都会からみたら何もないかもしれないけど、深川って生活していく上で便利な面がすごく多くて、本当に住みやすいまちですよ。そして都会にはない人と人の繋がりがあります。移住を検討されている方はぜひ積極的に足を運んでみてください。深川は素敵なところですよ」
農業を始めたい方に向けてはTさんからメッセージを。
「深川の花は『ホクレンの花』として全国に出荷されており、花業界ではとっても有名で、中でもスターチス・シヌアータの生産量は北海道1です。ただ深川は農業しやすいまちではあるけれど、農業を始めるということは簡単なことじゃない。だからポンとやってきて『はい農家になりました』なんてことはなく、地道に人と人との繋がりと経験を築いてこそ道は開けます」
現在深川市は移住のワンストップ窓口として「深川市移住定住サポートセンター」を開設し、専任の移住コンシェルジュ2名を配置のもと、「仕事・住まい・子育て環境」などの相談に応じています。また、新規就農希望者の育成を目指す「深川未来ファーム」では、働きながら農業を学ぶことができます。ぜひお気軽にご相談ください。
(記事を書いた人・写真 佐藤絵里子)
花農家 T・Yさん
お二人とも関東のご出身。Tさんは東京で農業大学を卒業後、大手花卉会社へ就職。そこで奥様のYさんと出会い結婚。1997年、農業大学時代のご縁から深川へ来て、新規就農を目指す。
現在花農家としてスターチス・シヌアータ、ダリア、アジサイアナベルなどの花を生産。「北育ち元気村~ホクレンの花~」として日本各地へ出荷している。