無理せず継続できる、環境にやさしい暮らしを実践したい
環境にも人にもやさしい暮らしの実践者 酒井 育美さん
- 移住エリア
- 東京都→愛知県→三重県伊賀市
- 移住年
- 2021年
「日々体当たり、試行錯誤しながら楽しく暮らしています」と語る酒井さんは、移住した伊賀市で理想の生活に向かって実践しています。
目次
今までの概念が崩れた時。そこから踏み出した、一歩。
愛知県出身の酒井さんは、複数の持病を抱えながら東京で夫婦で暮らしていました。2011年、第一子が誕生。その2ヶ月後に起きた東日本大震災をきっかけに、より環境の良い地方への移住を決意したそうです。
「複数の持病を持つ私は、健康がお金で買えないことは身をもって知っています。震災後は、今までの生活で当たり前だったことを削ぎ落とす行動に移しました。食べ物の一つひとつがどのようにして出来上がり流通されるか、農薬の有無、肥料や飼料の状況、どんなものが口に入るのかということを一つひとつ洗い出し、あらゆる物事を自分事として考える習慣がつきました」
その後、実家がある愛知県へUターン移住。その間に第二子も生まれ、都会でのマンション暮らしを約10年経験します。そのようななか、第二子が幼稚園を卒園するタイミングでコロナ禍に突入しました。子供たちがマンモス校の小学校に通っていた酒井さんは、密を避けて自宅学習に切り替えた時期もありました。マンションの室内でずっと過ごし、ダンゴムシすら触ることができない第二子の姿を見て悶々としたそうです。
「マンモス校では子どもが個々に対応してもらえる余裕もありませんでした。個性を伸ばせる環境とは言い難く、小さい学校に比べて経験できないことが多くあることも気になりました。そこにコロナ禍が重なったこともあり、さらに一歩を踏み出すことにしました」
ご自身が子どもの頃に体験・体感したことは、今も根強く残っているという酒井さん。まだ子どもたちが小さい今のタイミングでの移住はありだと思い、再び移住を決意します。
三重県伊賀市の家に出会ったことで動き出した、次の一歩
「愛知県の近隣で、より自然環境が良く、少しでも災害に強い安全な地域で空き家を探し、現地を回りました」
そうして出会ったのが伊賀の家です。人里離れたように見えますが集落のなかにあり、それでいて密集しておらず、広い庭があるところも気に入ったそうです。
「庭にはキンカンやゆずの木などがあり、たくさんの花がいたるところで咲き乱れる様子を想像し、ここは楽園だなぁ、と一目で気に入りました。今は、家族が食べるものを農薬や肥料は一切使わず、自然に任せて作物を育てています。小学校も全校で120人ほどと、前の学校の1/10以下の生徒数で、のびのびと過ごせそうな教育環境だったことも移住の決め手になりました」
古民家の暮らしは理想に向けて奮闘中
古民家の暮らしについてうかがったところ、都会暮らしとも通常の中古住宅の暮らしとも全く違うそうです。
「夏は涼しくて快適ですが、冬になると寒さが痛さに変わるほどです。2021年の春に移住してきてから初めての冬には学校にあるような縦長のストーブを入れましたが、部屋は全く暖まりません。先輩移住者さんに相談して応急処置をし、3月には薪ストーブのための煙突の穴を開けてもらいました」
現在は、室内の半分を大きくリフォームしているそうです。できる範囲で自然のエネルギーも有効に使いながら暮らしたいと考え、昔の土間に戻し、薪ストーブのお湯を使って床暖房ができないかと今まさに試行錯誤しています。理想の生活に向けてまた一歩、酒井さんは進んでいます。
移住者同士の繋がりで折れた心をリセット
伊賀市では移住者同士の交流イベントや通信があり、つながりの輪が広がってとても助かっているとか。また、ちょうど酒井さんが移住したころに、同じ移住者夫婦が、古民家カフェをオープンしました。大半を旦那さんが改装して作り上げたという古民家カフェに定期的に集まっているそうです。
「ご夫婦のテンポの良い、歯に衣着せぬやりとりを聞いているだけで癒されるんです。古民家リフォームの大先輩の意見をもらいつつ、心が折れた時はよくリセットしに行く、私のイチオシな場所です。お互いの経験を持ち寄り、楽しくおしゃべりながら相談もできます。話すことで、気持ちを立て直し、また頑張ろうと思えるんです。こういうお話ができる方たちと知り合えた事は本当に幸運です」
「田舎暮らしは大変なことも多いと分かったうえで移住してくる人が多いでしょうが、それを上回る大変さが待っています。田舎暮らしはのんびりしていません。古民家は思ったよりも寒く、庭は樹木や雑草との戦いです。ヘビやねずみなどの害虫もいます。それらの対策を考えながら一つひとつトライ&エラーを繰り返し、自分にとって、我が家にとって、どんな形がいいかを考えながら、無理はせず環境に優しい暮らしをしたい。そんな生活が楽しいと思える方に田舎の古民家移住が向いていると思います」
何が起きても笑い飛ばせること、それが移住における最大の装備!と酒井さんは微笑みます。
移住を考えている方へ。移住コンシェルジュと繋がろう!
三重県伊賀市は移住支援に力を入れていて、市役所に移住コンシェルジュがいます。酒井さんが、あらゆる疑問をコンシェルジュに話すと、解決策や、足掛かりとなる方法を、その都度ていねいに教えてくれたことで、安心して移住をすることができたといいます。
「特に我が家の場合、移住をするための最終的な決定には大きな難関がありました。子どもの食について学校に細かいことをお願いしなくてはならなかったのです。教育委員会に相談したい内容を、コンシェルジュが事前に伝えてくださり、今までの移住の経験の中で一番スムーズに学校側に話がつながりました。子どもたちが転校してくることを喜んでくださり、安心して学校に通うことができ本当にありがたかったです」
最後に、移住を考えている方にメッセージをいただきました。
「知っている人のいない土地でもこうして気にかけてくれる方がいる事は、移住をしていく上でとても心強いと思います。移住に迷っている方、まずはコンシェルジュに相談して、あなたの一歩を踏み出しませんか?」
環境にも人にもやさしい暮らしの実践者 酒井 育美さん / さかい いくみ
1978年愛知県生まれ。複数の持病を抱えながら東京で結婚。第一子誕生の2か月後に東日本大震災・原発事故が起こる。子育てのために、より環境の良い場所を求めて、実家のある愛知県へ転居。その後、第二子の卒園のタイミングでコロナ禍となる。「持病があっても、無理せず継続できる、環境にやさしい暮らしを実践したい。日々体当たり、試行錯誤しながら楽しく暮らす」ことを実践している。