「独身でも可能性がある!」目指すは島のなんでも屋さん
花や野菜の販売 太 悠子さん
- 移住エリア
- 東京都→鹿児島県 沖永良部島
- 移住年
- 2019年
鹿児島県 奄美群島のひとつ、人口1万2000人の沖永良部島は、農業が盛んな島です。2019年に移住した太(ふとり) 悠子さんは、コロナ禍をきっかけに沖永良部の特産品である花の販売を始めました。
移住前は「生活ができて楽しければ、いいや」と、結婚も起業もまったく考えていなかったそうですが、島にきて出来ることを出来る範囲で続けているうちに、どんどんやりたいことが増えたという太さん。いまは一つのことに絞らずに、頼まれごとにいつでも対応できる状態でいたいと言います。そんな太さんの移住ストーリーを伺いました。
目次
人との関係が希薄な東京から離れたい
2019年2月に鹿児島県の沖永良部島に単身移住しました。北海道出身で、移住前は東京で旅行会社に勤務していました。30代で独身、このまま結婚しなかったら、東京に住み続けるのは嫌だなと思っていました。離島暮らしに漠然とした憧れがありましたが「移住は家族でするもの。一人でするものではない」というイメージがあり、踏み出せないでいたんです。
30代後半に、観光で鹿児島県の与論島へいって気に入り、その後もヨロンマラソンに参加したりして、3年間ほど通いました。お世話になった民泊の移住者夫婦との交流を通じて移住のイメージができ、移住先を探す目的で、ほかの島も見てみようという気持ちになりました。
沖永良部島への移住から、まさかの結婚
移住前の1年間に2回、10日ほどかけて奄美群島の島をまわりました。たまたま知り合った人たちから「移住するなら沖永良部がいいよ」と勧められて。東京で離島イベントに参加したら、そこでも担当者が沖永良部出身だったり、出身者によく会うんです。縁があったのかな。島の規模感も人口1万2千人弱と大きすぎず、小さすぎず、ちょうどよかったので、沖永良部島に決めました。
旅行業界とも関連のある運送会社に就職が決まり、住まいは運よく移住体験住宅に当選。「仕事と家が決まったので何とかなるだろう」と移住を決意しました。
役場勤務で、島で多様な活動をしている地元の男性と出会い、必然的に仲良くなりました。移住して半年後、周囲も「いい人だよ」というので、早めに結婚しようということになり、会社は半年で寿退社しました。
奄美大島で沖永良部の花を売る
移住1年後、夫が同じ群島内の奄美大島へ出向になりました。実は奄美も移住先候補だったので、結婚して奄美に2年間住めるという棚ボタでした。
ところが時期はコロナがはやり始めた頃で、ほぼ人と会えず、引きこもり状態。10万円の給付金を有意義に使いたいと考えていたころ、沖永良部で主要産業の花がコロナ禍で売れずに廃棄されていると聞きました。そこで、給付金で花を仕入れて、集落の人に、あいさつ代わりに配ることにしました。閉塞的な時期でしたからとても喜ばれ、「次は買うからね」と言ってくれました。奄美は旧暦を大切にしていて、毎月1日と15日にお墓参りには、必ず花を買うんです。それならば、仕入れてみようかと始めたのが最初の販売のきっかけです。
その後も定期的に花を取り寄せて、家の前や郵便局で無人販売したり、知り合いのカフェに置かせてもらったり、フリマに出店したり。コロナのせいで本来は本土へ売られる花を新鮮なうちに奄美で販売することで、沖永良部の農家さんにも奄美の人にも喜んでもらえたと思います。
島のなんでも屋さんを目指す
昨年の春に沖永良部に帰ってからは、夫の実家の農業を手伝ったり、B級品の野菜や果物をフリマサイトで販売しています。奄美の花の販売も、お盆とお正月は続けています。行商みたいに、すごい量を持っていきますよ。年末に船が止まった時は、飛行機に持ち込めるだけ持ち込みました。農家が困っているから、意地でも持っていこうと。トラブルを楽しむくらいの気持ちでやっています。
私はものを作るのは得意じゃない。島の人は作るのは上手いけど、流通させるのが苦手で、せっかく作ったものが島で余っている。需要はあるはずなので、ネット販売などで沖永良部のものを外にもっと紹介したいと思っています。ゆくゆくはイベントを開催したり、島のガイドをしたり、地産地消のシステムを作りたい。ひとつの仕事に決めてしまわず、困ったときに重宝されるスキマ産業を目指しているんです。
移住を迷っている人へ
独身でもいろんな可能性がありますよ(笑)。私自身、結婚すると思っていなかったし、「移住して起業するぞ」と考えていたわけでもありません。たまたま見つけたことを楽しくやっているだけ。一つの仕事しかできない都会にいると世界が狭くなりますが、島の世界は広くて面白い人も集まっているし、アンテナを張っておけば出会いにも恵まれますよ。
(※このインタビューはふるさと回帰支援センター発行の情報誌「100万人のふるさと」2023年初夏号掲載の内容をWEB用に一部再構成したものです)
花や野菜の販売 太 悠子さん / ふとり ゆうこ
1978年北海道生まれ。関西での学生生活の後、大阪、東京の旅行会社にて手配業務に携わる。海外留学なども経て2019年に鹿児島県の沖永良部島に移住。島の男性と結婚し、実家や知り合いの農家から仕入れた花や野菜をネットなどを通じて販売する。
朝日と夕日が見れて、星が見られる今の生活が気に入っている。
インスタグラム @futori_flower