【前編】広島はなぜ「強い」?Vol.2
しなやかな心、応援する心。
瀬戸内の島に移住し、内側から地域づくりを!
広島に「強さ」を感じるのはなぜ?
それは海と山があり、食材が豊富で、ものづくりの伝統もあることで、どんなことにでも対応できる「強さ」があるから。そして、そこで暮らす人に魅力があるからだ、という思いで広島の人々を紹介していく本シリーズ。
第2回は「瀬戸内の島」編です。
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広島県内の瀬戸内に面する街に行き、高台から海を見れば、静かで広大な海にいくつも島が連なり、点在する風景に圧倒されます。その美しさを表現するのに「多島美」という言葉があることを広島で知りました。
そんな島の一つ、広島市から船で約30分、呉市とは橋でつながっている江田島。江田島や能美島など大小合わせて10の島々で、江田島市となっています。
江田島でご紹介したいのは、一般社団法人『フウド』代表理事の後藤 峻さんです。
後藤さんは2016年、地域おこし協力隊として家族といっしょに江田島に移住してきました。もともと広島県・府中町のご出身。東京で都市計画系のコンサルティング会社に勤めていましたが、地域づくりの現場に自身も「内側」から関わりたいと考えるようになり、移住を決めたそうです。
地域おこし協力隊は任期が3年なので、昨年、「卒業」しました。3年の間には江田島の素敵な人々を紹介する冊子『江田島人物図鑑』を制作したり、SUP(スタンドアップ・パドルボード)など、島暮らしならではのマリンスポーツの普及に取り組んだりしましたが、一番大きな仕事はコミュニティスペース『フウド』のオープンでした。地域の集会などに使われていた公共施設をリノベーションし、交流スペース、移住相談窓口、コワーキングスペース、多目的シェアキッチンを備えた場所にしたのです。
断水をしても、「しなやか」に適応する。
そんな後藤さんに、広島の「強さ」について聞いてみると、こんな答えが返ってきました。
「それは、『しなやかさ』と言ってもいいのかもしれませんね」。
弾力があり、折れることなく、柔軟に受け止める。なにかあっても、みんなで助け合える広島の人を表現するのにピッタリの言葉なのかもしれません。
後藤さんは続けて、こんなことを教えてくれました。
「西日本豪雨災害のとき、江田島でも約3週間、断水になりました。水道は隣の呉市から来ているのですが、呉市の水道設備が被災し、それで水が来なくなったのです。でも、島内の井戸を持っているご家庭が『ご自由にお使いください』と開放してくれたので、困ることはありませんでした。給水車も来ていましたが、そこに行列ができるような場面は見ませんでした」
江田島には井戸水があり、田んぼもあって、海がある。
「イノシシ猟をしている友人もいますよ。食べ物は自分たちでつくっていますし、言われてみれば適応力が高いのかもしれません。地方のよさですね」
島を楽しくする起業家が次々と誕生。
オープンから2年半が経った『フウド』は今、地域の人も気軽に立ち寄って会話を楽しんでくれるスペースになっています。江田島への移住相談に来た人と、たまたま来ていた島の不動産屋さんがそのままつながり、物件を紹介する、ということもあるそうです。
そして、「江田島はこれから、ますますおもしろいところになりますよ」と見せてくれたのがこのリーフレット。
今年2020年3月に、タウン情報サイト『こみみ江田島』が企画制作したリーフレットですが、これから江田島で起業をしようとする方がずらり。「絶景レストラン」「子育てママに優しいカフェ」など、心惹かれるものばかりです。
「江田島市商工会が主催する『創業塾』が毎年あり、その受講生たちが実際に起業するパターンが増えています。受講生には起業のための補助金制度もあります。受講生同士がつながって、互いに連携し合ったり、人が人を呼ぶという流れが生まれています」と後藤さん。
『フウド』でもこれからシェアキッチンを活用した商品開発や、そもそもの目的であるコワーキング、そして「縁づくり」の場としての機能を強めていくそうです。
「海のゴミ」問題にも取り組んでいきたい、という後藤さん。「江田島に行けば、なにかできそう」。そんなふうに感じてもらえる場所にしていきたい、というのがこれからの目標です。
後編では、江戸時代の建物も残る地区で7軒の空き家を活用してきた方をご紹介します!
<ライター:小西威史(パカノラ編集処)>