【後編】広島はなぜ「強い」? Vol.4
「知り合い」経済、「チャレンジ」経済。
目次
葬祭業を営み、コワーキングスペースやドローン事業も立ち上げ。
広島の魅力ある人を紹介するこの短期連載も、大トリとなる8人目のご紹介です。
その方が、「このまちに足りないもの、足りないパーツを事業にしているだけ」と言いながら、次々と新しい事業を立ち上げていく、いわば地域のための「チャレンジ」経済に取り組む福本博之さん。
福本さんは、瀬戸内に面し、製塩業で栄えた伝統的な町並みも残る竹原市で、葬祭業にコワーキングスペース、空撮・ドローン販売、カフェの運営などを手がける『フロービス株式会社』の代表取締役であり、地域資源を活かした「まちづくり」事業を行う『株式会社いいね竹原』の取締役も務める方です。
東京からUターン。地域に密着した仕事に。
福本さんは竹原市出身。大手メーカーの社員として東京で働いていましたが、父親が急逝し、父親が創業して経営していた『竹原葬祭』を継ぎました。2009年のことです。葬祭業は地域に密着した仕事です。福本さんも地域の活動などにも参加し、地域とていねいにつきあってきました。
その後、2016年に竹原市役所から移住促進プロジェクトへの協力を相談されたころから、一気に「チャレンジ」が始まりました。
竹原市と竹原商工会議所の出資による『いいね竹原』の立ち上げに加わり、空き家・空き店舗の活用や中心市街地の活性化などに取り組む一方、自身の事業としても空き家を買い取り、『泊まれるコワーキングスペースKATARIVA』をオープンさせ、空撮&「新しいもの」好きからドローン関連事業を始めました。
また、仲間とともに『たけはらパドルスポーツ協会』も立ち上げました。シーカヤックやSUP(スタンドアップ・パドルボード)を楽しみ、観光にも取り入れるための協会です。
フードトラック、グランピング用テントを導入。
そして、2018年から運営を始めたのが竹原市の里山エリア、仁賀(にか)町にある古民家カフェ『スペースアンソロジー』です。閉店を考えていた前オーナーから事業譲渡のかたちで引き継ぎ、スタッフや店舗はそのままに運営を続けています(※営業日、時間などはFacebookページでご確認を)
ただ、ここでも新しいことを始めています。フードトラックとグランピング用テントの導入です。ガスオーブンや2600W出力対応の発電機などを備えたフードトラックは、ピザが焼けたり、エスプレッソマシンを動かせて、店舗と同じことが移動先でできます。
また、自然豊かな仁賀町で焚き火や星空鑑賞、虫採りや川遊び、農業体験などを、グランピングで楽しんでもらおうとテントを購入しました。
「ネタ」だらけのまち。
「竹原のまちはネタだらけで、おもしろくて仕方がありません。そして、新しいことを始めたり、動いていると、また新たな仕事や人とのつながりが生まれていきます。フードトラックを導入したことで、今年3月に広島市の中心市街地で行われた次世代型のまちづくり社会実験『カミハチキテル』からも声がかかり、出店しました。社会実験に参加できるのって、楽しいですよ」と福本さん。
「私たちは『民間』なので、竹原だけにこだわらず、瀬戸内の島の町とだって連携していきます。『いいね竹原』では、竹原にある『海の駅』と『道の駅』の指定管理も請け負い、空き家・空き店舗再生の成果としては『NIPPONIA HOTEL 竹原 製塩町』という高級ホテルもオープンしました。雇用も生まれています」
「チャレンジ」の結果が次々に生まれてきています。
すぐそばで見つけた「秘境」。ここで遊びたい。
そんな福本さんが最近見つけた「ネタ」を、最後に教えてくれました。
「『スペースアンソロジー』のすぐそばで『秘境』を見つけたんです。里山の中ですが、川が流れ、元は田んぼだったのか、フラットな部分もあって、かつて人が住んでいた『遺跡』感もあります。秘密のキャンプ場にするのもいいなと思います。遊べる場所です。土地の持ち主も知っているので、やろうと思えばすぐにでもできます」。
福本さんなら、きっと実行してしまうのでしょう。
また次に会えるときが楽しみで仕方ありません。
4回にわたりご紹介してきた広島の「強さ」。その源泉となる人の魅力、おもしろさを少しでもお伝えできていればうれしいです。本当にありがとうございました。
なお、第2回でご紹介した後藤 峻さん(江田島市)、第3回の酒井裕次さん(尾道市因島)と小谷直正さん(府中市)、そして今回ご紹介の福本博之さん(竹原市)は今年度、広島県の「移住コーディネーター」としても活躍されます。
最新の情報は、広島の移住サポートメディア「ひろびろ ひろしま」でご確認ください。
<ライター:小西威史(パカノラ編集処)>