【後編】広島はなぜ「強い」?Vol.1
「これからは田舎と未来が融合する!」
老舗料亭のようなお弁当をつくる、福祉作業所って?
次に紹介したいのは、こちらです!
まるで老舗の料亭がつくっているお弁当のようですが、実はこれ、広島市安佐北区にあるNPO法人『ウイングかべ』がつくっています。『ウイングかべ』は精神障害者の就労支援に取り組む団体です。
このお弁当の名前は「可部夢街道弁当」。650円~1500円までいくつかの種類があり、受注販売をしています。調理は、精神障害や知的障害のあるスタッフが担当しています。
私がこのお弁当と出合ったのは、数年前、同じく安佐北区にある小河内地区で新規就農した若手の農家さんを取材したときでした。
「規格外という理由で、まとまった数では卸せない小松菜や水菜を買い取ってくれる福祉作業所があるんです」と教えてもらいました。それが『ウイングかべ』だったのです。
そのときもこのお弁当を食べましたが、一つ一つの料理にかけられた手間を感じ、食材のよさと相まって、「こんな料亭クラスのお弁当をつくれる福祉作業所って、いったいどんなところなんだろう!?」と衝撃を受けました。
今回、改めて、そのお弁当をつくっている『ウイングかべ』理事の三島満里子さんに会うことができ、お話を聞いてみました。
お弁当をつくることで、地域を紹介!
『ウイングかべ』の設立は1991年。その後、歴史ある可部地区にあった築150年以上の古民家を改築して『コミュニティーサロン可笑屋(かわらや)』もオープンし、地域の人たちの交流の拠点にもなっています。
一昨年の西日本豪雨災害の後の復旧作業の時には、ボランティアの方も含め、休憩所になったり、互いの情報交換ができる場にもなったそうです。
お弁当の販売を始めたのは2014年から。今では年間約1万食が売れる人気のお弁当に。朝、15~16人のスタッフで手作りしています。
野菜は小河内地区の農家さんから仕入れ、卵や豆腐なども地元のお店や生産者さんから買っています。お米は隣の市である安芸高田市八千代町にある棚田で育てられたコシヒカリを使用。お肉や魚系は地元のスーパーから仕入れますが、野菜中心のおかずで、それらはすべて地のもの。
「お弁当をつくることが、私たちの地域を紹介することにつながります」と三島さん。
かけた手間は、必ず伝わります。
お弁当の評判は、「口コミ」で広がっていったそうです。
「私たちの中にはプロの料理人は一人もいません。でも、巻きものが上手な人、混ぜものが得意な人、同じ形のカボチャコロッケを根気よくつくれる人、それぞれに得意なことを持った人がいて、一生懸命、手間をかけてつくっています。その心が食べている方にも伝わっているようでうれしいです」
百歳になる女性のお祝いの席のためにお弁当を発注してくれた、その女性の身内の方からは「(普段は残すことが多いのに)今日のお弁当は、全部食べてくれました」という声を返してもらったこともあったそうです。
「素材から始まる人のつながりが、そのまま味になっているのかも」と三島さんは言います。
「口コミ」「つながり力」、そんな言葉も広島の強さを表すキーワードかもしれません。
第2回でも引き続き、広島の魅力的な人を紹介していきます!
■NPO法人 ウイングかべ webサイト
https://www.wing-kabe.com/
<ライター:小西威史(パカノラ編集処)>